エピソード4 『イエスの子らよ』
教会から、階段を2つ下りて廊下を2つ曲がったところに、
同じような部屋がいくつも並んでいたわ。これが寄宿舎ね。
おばさまは、私を一番奥の部屋に通してくれた。
トントン。
「エルサ?いるかしら?」
「はい。ただいま。」
戸を開けてくれたのは、小さな女の子だったわ。
「エルサ。新しい修道女よ。マリアンヌですって。
いろいろ教えてあげてね?くれぐれも、仲良くするのよ。」
「はい。シスター・エマニエル。」
あら、2人部屋なのね。私、仲良くできるかしら?
きっと大丈夫ね。礼儀正しくておしとやかな子じゃない。
「服はこれね。荷物を置いて着替えたら、
エルサに食堂を案内してもらいなさい。わかった?」
「はい。わかりました。」
パタン。おばさまは行っちゃったわ。
「おばさま」じゃないわね。「シスター」って呼ばないといけないんだわ、修道院では。
私は今度は、エルサにあいさつをしたわ。あいさつばっかりで忙しいわね。
「はじめましてエルサ。私はマリアンヌです。
私10才だけど、あなた何才?」
「アタシ、9才よ。」
「そう。じゃぁ私のほうがお姉さんね。」
「そう?アタシ9才だけど、この修道院に来てもう2年も経つわ。
アタシのほうが先輩ってことよ。
…あなた10才なの?もっと幼く見えるわ。
栄養が足りてないんじゃないの?家が貧しいの?」
「みんな同じこと言うのね!小さくてもいいんじゃない?別に。
あなたのほうが先輩だけど、私のほうがお姉さんよ。」
「そうね。じゃぁ、どっちもどっちってことで。」
エルサったら、なんだか急にナマイキになったような?
シスター・エマニエルの前では、ネコをかぶっていたのかしら。
私にチビって言ったけど、エルサもチビだったわ。
髪はおかっぱで、ほっぺにそばかすがたくさんあるの。
ナマイキな子かもしれないけど、仲良くしなくちゃ。
私は、友愛の気持ちをこめて、1つ話題を作った。
「さっそくだけど、1つ聞いてもいい?」
「なんなりと。」
「大人って、どうしてウソばかりつくのかしら?
さっきから私、オムレツオムレツって言われてるのに、
いつまでたっても、オムレツにありつけないわ。」
「それはアレよ。
アタシたち子供っていうのは、エサで釣らないと良い子にしないからよ。
マリアンヌだってそうでしょ?いつでもお行儀よくしてる?あなた。」
「ううん。あんまり言うこと聞かないわ。」
「そうでしょ?それならウソ付かれたって仕方ないのよ。
どっちもどっちってことね。」
『イエスの子らよ』


