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エピソード4 『マイウェイ -迷路の町のカロリーナ-』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月6日
  • 読了時間: 3分

更新日:2024年1月20日

観光客でにぎわうって、良いことなのかしら?

コンサートが開かれるようになったんだから、良いことかもしれないわ。

でも、カフェテリアのマスターがクレーム付けられたのも、

やっぱり、観光客が増えたせいよ。

パパのお給料が増えたのは、観光客でにぎわったおかげだけど、

パパと遊ぶ時間が減っちゃったのは、

やっぱり、観光客が増えたせいよ。


特に、広場へと続くメイン通りは、またたく間にお店が建っていったわ。

ピザ屋が3軒できて、次にピザ屋が3軒できて、

おまけにピザ屋が3軒できたわ。ピザ屋ばっかりっていうことよ。

昨日までクツ屋だった人すら、ピザ屋をはじめるんだから。

ピザ屋は100軒あるけど、クツ屋は1軒しか無いのよ?

それなのにクツ屋のおじさんは、ピザ屋にくら替えしちゃった。

それだけ、観光客相手の商売が儲かるっていうことよ。

ピザ屋さんではコーヒーも飲めるけど、300リラもするのよ?

覚えてる?「天使の待ちぼうけ」なら、100リラで飲めるのに。

それでも観光客は、300リラのコーヒーをガブガブ飲むの。

観光客ってそういう生き物なのよ。高いものが好きなの。

それはそれで好きにしたらいいんだけど、

でも、そのせいで、

クツ屋さんだけじゃなく、文具屋さんも左官屋さんも古本屋さんもなくなっちゃった。

私たち、となり町まで行かないと、ブーツすら買えないのよ!?


やっぱり、観光客でにぎわうっていうのは、良いことじゃないわ。



おかしくなちゃったのは、

クツ屋さんや左官屋さんだけじゃなかったの。

教会もよ!

観光客でにぎわいはじめてからというもの、

サンマリノ教会では、イエス様やマリア様のカードを販売するようになったの。

それに、サンマリノ教会をかたどったブローチとかも。

教会でそんなの売る必要あるのかしら?教会は、お祈りするところだって思ってたけど。

それに、ロウソクの値段が10リラから100リラになっちゃった。

そんなにお金を集めて、もう1つ立派な鐘楼でも建て増しするのかしら?

町中で色んなウワサが立ったわ。

でも、増設されたのは、神父さんのお腹だけだったわ。太ったってことよ。


いまや、メイン通りはすごい人ゴミ!観光客の行き来がすごいのよ。

メイン通りだけじゃ足りなかったみたいで、

その近くにもたくさんのお店が出来たし、たくさんの人がさわぐようになったわ。


私のパパは、「ヴェネチカの静かな暮らしを守るべきだ!」って、

市庁舎に手紙を書いたわ。

ほかにも署名が142人分集まったから、それも一緒に。

「天使の待ちぼうけ」に出入りしてれば、

同志の100人くらい、カンタンに見つかるわ。

カフェテリアって、そういうところなのよ。似た感性の人が集まるの。

でも、市長さんは観光地化を止めたりはしなかった。

市にも税収がいっぱい入ってくるんですって。

その税収で何が出来たかっていうと、

広場のはずれに、牢獄ができたの。

観光客が増えて、移住してくるよそ者が増えて、犯罪者が増えたから、

牢屋が必要になったんですって。ムダに豪華な牢屋だったけど。

でも、観光地化する前には犯罪なんて無かったから、牢屋も必要なかったのに?

すると、牢屋造るために税収増やすなんて、意味あったのかしら?

それと、市長さんのお腹も増設されたわ。太ったってことよ。


なんだか、ヴェネチカの大人の人たち、おかしくなっちゃった。



『マイウェイ -迷路の町のカロリーナ-』

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