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エピソード48

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年2月1日
  • 読了時間: 2分

ラクダでの登山は、

最初の20分程度は楽しかったけれど、

だんだんと、苦痛になってきた…


ラクダのストロークのたんびに、 僕の股が大きく擦れちゃって、

足全体がひどく痛んだ…。

でも、

「この状態だったら、自分で歩いたって痛いだろうなぁ…」そう思って、

とにかく、じっと痛みに耐え続けた。

溢れんばかりに輝く、満天の星空に、

見とれている余裕も、なかった…

生地の厚いジーンズとかはいてたなら、たぶんそんなに痛くないんだと思うよ。

僕はとにかく、夏の海水浴場みたいなカッコしてたからさ。



痛みに耐え耐え、2時間ほど登ると、

少女は、ラクダの足を止め、僕を降ろさせた。

「ここで終了だ」という。

ラクダでの登山が途中までだというのは、

確かに、聞いてはいたけれど、

他のラクダは、まだ背中に旅行者を乗せていた…

僕は、アタマが混乱したけれど、

股の痛みから解放されるメリットを考えたら、

「別にココで終了でもイイや」と、思ったよ。

そして約束の50ポンドを手渡すと、

しかし彼女は怒って、

「No!60ポンドだ!!」 と、荒々しく言い放った。

「50ポンドしか持っていないって、さっき言ったじゃないか!」

と説明しても、

彼女はただ、声を荒げて怒るだけだった。

何から何まで、野生の動物みたいだった。

小銭をかき集めると、更に5ポンド分くらいはあったから、

それをまとめて、彼女に押し付けた。

怒り狂った野生の動物とは、

知的な議論をしても、意味がナイだろうからさ。

彼女は、それでも怒り続けたけれど、

僕に攻撃をすることは無かったし、

しばらくムシして歩き続けたら、やがて、追ってくるのも諦めてくれた。


ジャマ者が居なくなったから、

道端で少し休憩して、

体力と痛みは、多少は回復したよ。

けれども、

残りの道のりも、思いのほか長く険しく、

そして、寒さが恐ろしく厳しくて、

僕はついに、意識が朦朧としはじめてきた…



『導かれし者たち』

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