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エピソード5 『リストラ後の7回裏で…』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月26日
  • 読了時間: 2分

エピソード5

…もう、お察しのことかと思います。

今、こうして駄文を書き連ねている私こそが、

社長であり、リストラの対象となった、乙田です。



冒頭にて、

「極めて優秀な人材が5人集まった」と申し上げましたが、

実のところ、私・乙田だけは、

あまり優秀な人材とは、言えません。


私の特徴は、

「気性が穏やかであること」と、「打たれ強いこと」でした。

この特徴は、クレーム処理に最適でした。

また、社内がピリピリしてしまったときには、

私の何気ない言動が、スタッフの冷静さを取り戻させるようでした。


決して、手数を多くこなせるタイプでは、ありません。

しかし、

私の穏やかな性質に好感を持ち、

リピートしてくださる顧客が、大勢居ました。


この、「穏やかである」という性質を持った私は、

資金提供が可能であるということだけでなく、

若く気性の荒いこともある、新進気鋭の集団には、

重要な清涼剤であったようです。

しかし、

仲間たちも歳を取り、

私と大して差異の無い穏やかさを、まとい始めました。

私の代わりは、存在しているのです。

穏やかさだけが特徴である私は、お荷物なのです。

資本主義社会の基準で言えば、それが妥当な答えです。



…かと言って、

初期メンバーや次期中堅メンバーは、

収支ランキングを出したときに、私が最下位になることを、

予想していたわけでは、無いようでした。

パソコンのモニターが、

私の名前を一番上に表示したとき、

メンバーの全員が、固まってしまいました。


数十秒の沈黙のあと、

全員が揃って、「考え直しましょう!」と言いました。

しかし私は、

一度決めたルールを、破りたくはありませんでした。

私が、みんなを説得しました。

説得に、3日掛かりました。



…いや、

それでも尚、彼らは、喰らいついてきました。

そして、

とてつもなく恐ろしいことを、言い出しました。

「乙田をリストラ対象にする代わりに、

 俺たちの夏冬のボーナスを、全額、5年分、

 乙田の退職金に当てる!!」



私は、リストラになったのに、泣いて喜びました。


…退職金が入ったからでは、ありませんよ?

素晴らしい仲間に恵まれ、素晴らしい愛情を受けたからです!!


『リストラ後の7回裏で…』

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