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エピソード5 『真理の森へ』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月19日
  • 読了時間: 2分

エピソード5

まだ昼の3時。

荷物を置いて、軽く観光してみることにしました。

やはり静かです。この地区には、基本的に、店が少ない。

コンビニなんて1つもないし、スーパーもようやく1軒、見つけられた程度です。


大きな通りまで出ると、さすがに華やいでいます。

ヨーロッパ特有の、ルネサンス建築の大きな街です。

いくつかは現代人に建て替えられているけれど、

それでもやはり、美しい景観をキープしています。

そのルネサンス街に、マリメッコのような大手ブランドのブティックがひしめいている。

しかし、店数の割りに人波は少ないのです。東京よりずいぶん少ない。

レストランも少ないです。チェーン店なんてマクドナルドくらいしか無いらしく、

それ以外はもっぱら、小洒落た雰囲気の個人経営レストランです。


もう少し歩いて、路地に入っていくと、

アンティーク・テイストの雑貨屋さんが並びはじめます。

ときどきブティックがあって、古本屋さんがあって、そしてまた雑貨屋さんがある。

街を歩くだけでも、楽しい。


2時間も歩くとくたびれてきて、引き返すことにしました。

お腹が減ったけどレストランは高いので、

マクドナルドのハンバーガーをかじりながら、歩きます。


宿の近くに、立派な教会を見つけました。

私の宿と同じように、レンガ造りの教会です。ウスペンスキー大聖堂というらしい。

私は興味を引かれ、その小高い丘を登っていく。

入ってよいものかよくわからなかったけど、入り口の扉は開いていました。重い重い木の扉。

扉を開けて、びっくり!

中から、とても美しい歌声が聞こえてきたのです。


私は早足に、聖堂まで入っていく。

偶然にも、ミサというやつの最中であるらしかった。

神父さんが何かを論じると、

合いの手を打つかのように、参拝者たちが美声を発します。

そしてときどき、2~3分くらいの小歌を歌います。

美しい声が聖堂いっぱいに響き渡り、さらに美しい。

教会の聖歌というのは、こんなにも美しいものだったのか!

私は、涙が出るほど感動してしまいました。

聖歌の意味などわからない。キリスト教にも詳しくない。

ただただ、その聖歌の美しい響きに、胸がうち震えたのです。


…あとで聞いたところによると、

どこの教会でもこんなに美しい聖歌がお目にかかれるわけではないそうです。

フィンランドは聖歌の美しい国であり、

このウスペンスキー聖堂は中でも、聖歌の盛んな場所であるそうな。

この聖歌にも、フィンランドの国民性が垣間見られる気がしました。

誰一人、目立とうとするような人はいなくて、

ただただ、美しく周りに溶け込むことにだけ集中しているようでした。

調和を愛しているのでしょう。


『真理の森へ』

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