エピソード7 『リストラ後の7回裏で…』
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- 2023年3月26日
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エピソード7
…前置きがずいぶん長くなってしまいましたが、
そういういきさつで、私はリストラになりました。
私には、家族がありました。
妻・翔子と、4人の子どもです。
リストラに遭った当時、
上の二人は私立の大学に通っており、
3番目の子は私立大学の受験を控えていました。
このような、
「生活費のずいぶん掛かりそうな境遇」の中で、職を失ったのです。
だからこそ、私の仲間たちは、
私をリストラ対象にすることに、酷く胸を痛めたのです。
私一人であれば、
テントと寝袋でもあれば、橋の下ででも暮らせてしまうことを、
貧乏放浪の経験を分かちあった彼らは、よく知っています。
…そうなのです。
私は、旅をしていない時分も、
大してお金の掛からない人間なのです。
基本が、会社と家の往復であり、午前様も多いため、
余暇の費用がほとんど掛かりませんし、服飾費も掛かりません。
…いや、
こう見えて、お洒落に関しては、少し興味があります。
しかし、
ア○マーニにスーツを選びに行っても、どれもこれも真っ黒一辺倒で、
お洒落を楽しんでいる気分には、皆目、なれません…。
私は、
ネクタイで、お洒落をするのです。
2ヶ月に一遍、
家族の誰かを連れて、ショッピング・モールに出掛けます。
そして、その家族と一緒に、ネクタイを選ぶのです。
その都度、様々な店に行き、
様々な色・模様のネクタイを選びます。
家族はそれぞれ、
微妙に趣味趣向が異なり、また、年齢によっても変わっていきます。
彼女たちは(私以外、全員女性です)、
その都度、面白がってネクタイを選んでくれます。
地味目なものを選ぶこともあれば、
薄い紫にシルバーを組み合わせたような、若者風を選ぶことも、あります。
下品なくらいに大きく、アニメ・キャラが描かれたものもありますし、
お葬式にしか着けられないものも、あります。
半分はジョーダンであり、半分は真面目です。
大概誰も、半々くらいの割合で、ネタっぽいものとハイセンスなものを、
選び分けているようです。
2ヶ月に1本でも、ネクタイは増え過ぎてしまうので、
何年か経つと、
会社のスタッフに譲るか、リサイクル市に提供します。
妻・翔子も、私のネクタイをコーディネイトするデートを、
飽きずに30年近く、楽しんでくれています。
また、この、
ネクタイ・ファッションショーのような私を、
会社のスタッフたちは、とても楽しんでくれています。
私が泥棒風呂敷の柄のネクタイを締めていけば、
皆、気兼ねなく、ケラケラ笑ってくれます。
かなり有効な、コミュニケーション・ツールになってくれています。
…時々、
電話でシリアスな会話をしているスタッフが、不意に私の胸元を見てしまい、
噴き出してしまうことがあるのが、難点ではあるのですが…。
そんな「ファッション費」以外には、
私はほとんどお金が掛かりません。
そして、面白いことに、
一家の主である私が、こうした倹約的な価値観をしていると、
妻・翔子や娘たちもまた、あまりお金を浪費しない人間に、育つのです!
すると、
このような、学費の掛かる世代の6人家族でも、
年間の出費は400万程度で、凌げてしまうのです。
私の年収は500万程度なのですが、
それでも毎年、100万の貯蓄が出来ます。
5年に1回ほど、家族で海外旅行をするので、
100万が丸々飛んでしまう年もあるのですが…。
ちなみに、
妻・翔子は、専業主婦です。
私と結婚する前は、普通に正社員で働いていましたが、
パニック症を発症して、就労を辞めました。
家に居る時間が長いので、
妻・翔子は、なんでもかんでも、手作りするようになりました。
あくまで、趣味として楽しんでいるだけなのですが、
それは結果的に、
生活費を更に押し下げることにも、繋がっています。
「今度はログハウスを建ててみたい」
などと言い出し始めたので、
私の収入や貯金が底を尽きても、
なんとかたくましく生き延びていけそうな気も、してしまいます。
『リストラ後の7回裏で…』



