エピソード7 『星空のハンモック』
- ・
- 2023年3月20日
- 読了時間: 2分
エピソード7
リナちゃんに申し訳ないなと思いながらも、私はカツミくんと並んで歩いた。
沈黙は気まずい。何か話さなきゃ。
「カツミくんは、何才ですか?」
「僕?23才。」
「やっぱり!私よりちょっと上だろうなって、思ったんです。私21です。」
「21か。若いね。」
「あんまり変わらないですよ。
カツミくん、歌うまいですね。
日本一周なんてしてないで、オーディションとかライブとかは?」
「あはは。プロは目指してないんだ。今はね。」
「そうなんですか?どうして?上手いのに。」
「一応、プロダクションに声掛けてもらったりもしたんだけどね。
音楽業界って腹黒いんだなぁって、知っちゃって。
ポリシー曲げてまで、やりたくないなって思ったんだ。」
「正義感が強いんですね。」
「今は、日本中のあっちこっちで気ままに歌ってるほうが楽しいんだ。
そのほうがたくさんの人に僕の歌聞いてもらえるしね。」
「へぇ。」カッコイイな、感性が。
やがて百名ビーチに到着する。
浜川御嶽(うたき)に向かって、さらに北のほうへと歩く。
「いい海だね。うわさどおり。」
「ですよね。ほとんど地元民しか来ないみたいです。今はシーズンオフだし。」
「雰囲気いいよ。ここでも歌いたいな。」
浜川御嶽はちょっと奥まった茂みの中にある。
カツミくんは、祠(ほこら)に手を合わせている。
「何をお願いしたんですか?」
「あはは。お願いはしないよ。
祈ったんだ。沖縄の平和を。」
「祈り、ですか。」私は願掛けしか頭になかった自分を恥じた。
『星空のハンモック』



