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エピソード7 『真理の森へ』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月19日
  • 読了時間: 2分

エピソード7

翌日朝早く、電車に乗って、ユスキュラの街へ向かいました。

ヘルシンキから、北へ北へとひた走るのです。


改札口を出ると、大柄な若い男性に声をかけられました。

「ジャパニーズ?翔子サンデスカ?」

私がYesもNoも答える前から、私をその人だと決めつけ、

肩に手をかけ、握手をしてきました。私はびっくりです!

この街に今日訪れる黒髪の女性など、およそ私しかいないのでしょうから、

その決め付けも、わからないでもありません。

しかし、この馴れ馴れしい距離感は、私の好きなものではありませんでした。

私は、心の中の嫌悪感を必死に抑え、せいいっぱいに会釈をしました。

「あなたが、私のチューターさんですか?」

ユスキュラ大学には、チューターという制度があるのです。

留学生を含めた新入生すべてに、世話係が付いてくれるのです。

それはもっぱら、同大学の上級生が担うのだとか。

「そうです。

 何度かメールでコンタクトしました、チューターのトゥーリです。ヨロシク!」

彼は、カタコトの日本語を織り交ぜながら、再び愛想よく私の手を握りました。

そして、間髪入れずに私のキャリーバッグをたぐり寄せると、

それを自分で転がしながら、先陣を切って歩きはじめました。

「あの…

 迎えに来てくださったのは嬉しいんですが…

 あまりハイテンションに、しかも日本語で言い寄ってこられると、

 いくぶん…不審に感じてしまうのですが…

 『日本語をしゃべる外国人は不審だ』って、ガイドブックに書いてあったし…」

「おやおや!?

 『日本語の話せるチューターを希望』って申請したのは、翔子のほうでは!?

 それだから俺が選ばれたんだけど…」

「あ、そうだったんですか!アイムソーリー…」

私はてっきり、ナンパのような下心でもって彼が名乗り出たのかと、

勘違いしていました。申し訳ない気持ちになりました。


『真理の森へ』

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