エピソード8 『沖縄クロスロード』
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- 2023年3月14日
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エピソード8
「着いたよぉ!」
と言われ、タクシーから降りてみると…
あれ?オーシャンビューではあるけれど、大きな民家!
「おじさん!ここじゃないです!
私たち、民家じゃなくてホテルに行きたいんですよ。ニライカナイです!」
「そうさぁ。ニライカナイだろ?
ここ、ニライカナイだよぉ。受付行ったらわかるさぁ。
民家じゃなくてホテルだから。ココ。だぁいじょぶ。
じゃぁな。達者でな!」
ブルーン。
タクシーは、そそくさと去っていってしまった…
ぽかーん
とおじさんを見送ったユカたちは、
半信半疑ながらも、とりあえず民家に入ってみることにしました。
どうせ違うんでしょうけど、タクシーくらいは呼んでくれるでしょう。
ユカたちは、キョロキョロしながら庭に入っていきます。
門も玄関も、豪快なまでに開け放たれています。まさに沖縄!
「すみませーん。誰かいますかー?」
ユカは率先して声を出す。3人の中では一番社交的ではあると思う。
「はーい!おや?新しいお客さんかな?」
中から、30才くらいの男性が出てきました。
「あの、ここ、ホテル・ニライカナイじゃないですよね?」
「あははははは!
ニライカナイはニライカナイだけど、『ゲストハウス』ニライカナイだよ(笑)」
「ゲストハウスー!?」
「そうさ。ゲストハウス。まぁ、宿泊施設には違いないよ。」
どうやら、タクシーのおじさんがカンチガイした模様です。
「ホテル・ニライカナイ」と「ゲストハウス・ニライカナイ」と。
「えー!サイアクだぁ…沖縄着いて早々、ツイてないなぁ…」
急に、どっと疲れが噴き出してきました。
「ホテル・ニライカナイは、ここから近いんですか?
タクシー、呼んでもらえますか?」
「あはははは!ホテル・ニライカナイは東海岸だよ。ここは西海岸。
タクシーで行っても30分以上掛かるし、5,000円以上掛かるんじゃないかな?」
「5,000円!?マジですか??」
「マジだよ。5,000円は超えちゃうと思うけど。
お金、無いの?高校生っぽいもんねぇ。
夕方まで待ってられるんなら、オレが車で送ってってあげよか?」
「え!いいんですか?お仕事は??」
「あははは!ゲストハウスの仕事なんて、
客と戯れることがメインだからさ(笑)
今日はスタッフ居ないけど常連客いるから、留守番任せられるし。」
「へ?お客さんに留守番任せちゃうんですか!?
そんな物騒なことしたら、チーフに怒られませんか!?」
「あはははは!チーフとか居ないし。
東京の価値観じゃ信じられないかもしんないけど、
沖縄のゲストハウスじゃ、客に留守番任せることも少なくないよ。」
なんて自由でおおらかなんだ!!
「…それにしたって、
ライバル店にお客を送っていくなんて、そんな悠長なことして大丈夫なんですか?」
「悠長?うーん。儲かってはいないけど…
かといって、君たちそもそも、ホテル・ニライカナイの客なんでしょ?
それをオレが奪い取っても、嬉しくないよ。悪人みたいじゃん。
宿経営なんて、競争するもんじゃないよ。」
「えー!?亀戸の駅前じゃ、居酒屋もカラオケ屋も、
必死に客の奪い合いしてますよ?」
「そうだよ。東京ではそれがジョーシキだけど、
世界のジョーシキってワケじゃないよ。良識とも思えないなぁ。」
「それでもお客さん引っ張ってこないと、チーフに怒られるんですよ?
お客さん奪ってくることが正義だし、200円多く時給もらえるんです。」
ユカはグチっぽく言った。誰かに憎っくきチーフのグチ聞いてもらいたかったんだ。
「あはははは!そうだよね。
そういう商売がイヤな連中は、こうして沖縄に流れてくるのさ。
それで安っすい店経営するんだよ。」
へぇー。こういう大人って居るんだぁ。
『沖縄クロスロード』



