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エピソード9 『かのんのノクターン』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年4月14日
  • 読了時間: 3分

エピソード9

「…わたし、どうしたら良いんでしょうか?」

「少し、遊びなさい。

 外にくり出して、友達や恋人と遊んだほうが良いし、

 音楽的にも、もっと遊んだほうが良い。」

「音楽的に、遊ぶ?」

「そうだ。自由を求めるんだ。

 友達のバンドでキーボードでも弾いてみたらどうだろう?

 ポップスやロックに目を向けるんだよ。

 そのためには、コードを覚えなくちゃならないし、アドリブの技術も要るな。

 それはそれでちょっと大変なんだが、

 だがね?今よりもずっと、楽しく音楽ができると思うよ。

 7連符なんか弾きこなさなくていいし、ミスタッチがあっても誰も怒らない。

 それだけじゃないぞ?

 創造の喜びも味わえる!

 常に作曲し続けるようなものだからなぁ。

 美しい旋律を思いついたときの興奮といったら、それはもう格別だよ。」

「わかりません…」

「わからなくていいんだよ。それが当然だ。

 クラシックを生真面目に練習すればするほど、

 創造音楽は難しくなる。わからなくなる。そういうものなんだ。

 それでもやってみたらいい。じきにコツが掴めるよ。」


「でも、母が…」

「そう。そこも大きな問題だな。

 クラシックは宗教に似ている。

 道からそれるとき、たくさんの反対に遭うだろう。

 しかし、人類に宗教の自由が約束されているように、

 私たちには音楽の自由も約束されている。

 どのような音楽を楽しむか、それは強制されるべきものではないんだよ。

 勘違いしないでおくれ?

 クラシックを否定する必要は無いんだ。拒絶する必要はない。

 ただ単純に、他のジャンルにも心を開こうという話さ。」

「お母さん…認めてくれないと思う…」

「そうだな。しかしそれもまた、君の課題かもしれない。

 母親に対して従順であることは、美しいことだ。

 しかし、母に従順でありすぎることは、素晴らしいと言えるんだろうか? 

 君の人生は、君の人生だ。お母さんのものではない。

 君は、自分で考える力を養う必要があるし、

 親に反対されても自分を貫く、そんな強さも身に付けなくてはいけない。

 人間には、そういう能力も必要なんだよ。」


「わたし、盲目過ぎたんでしょうか…」

「そうかもしれないね。

 いや、でも気にすることはない。

 日本人は、A型気質の者たちは、総じて君と同じだよ。

 君ほど極端ではないが、皆、むなしく何かに盲目している。

 勉強しまくっても報われず、

 子供に尽くしまくっても報われず、

 会社に尽くしまくっても報われない。

 そして社会や誰かにいいように吸い取られ、ボロボロになっている。

 そうならないためには、生真面目すぎないことが大切なんだ。ジャジーに生きることだよ。

 いいか?

 人生は音楽とよく似ているよ。

 練習し、勉強し、譜面をきっちり奏でようとすることは、とても重要だ。

 でも、万個の音符を1つも間違えずに奏でるのは、それは馬鹿げているよ。

 『あぁ、ステキな曲だな』と思ってもらえれば、それで充分ではないか?

 人生もそれと同じだ。100点を目指す必要はない。」


『かのんのノクターン』

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