エピソード9 『クラシックの革命児』
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- 2023年4月11日
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エピソード9
開演予定の2時キッカリになった。
ボクは、慌てて耳を塞いだ。
なぜかと言うと、(古いホールは特にそうだけど、)
クラシカルなホールでは、
開演時や休憩の終了時に、
「とても耳触りで無機質なブザー音」が、何十秒も鳴り響くからだ!
着席や静寂を促したい気持ちはわかるのだけど、
どこも、あまりに不愉快すぎるよ…。
でも、このコンサートは違った!
ぜんぜん違った!
1人のトランペット奏者が、
てくてくとステージ中央に歩いてきて、
「天空の城ラピュタ」に使われている、「ハトと少年」というファンファーレ曲を、
高らかに、吹き鳴らしたのだ!
パズーがハトのエサ遣りの後に吹く、町民を起こすための、あの曲だ!
…言わずもがなだ!
聴衆は、一瞬にして静まりかえり、着席し、ステージに釘付けになった!
なんて上品で、ユーモラスで、感性豊かな「開演ブザー」であろうか!?
そうして静まりかえったところで、
アナウンスが「携帯電話はお切り下さい」と囁けば、
聴衆は、一発で言うことを聞く。
アナウンスが終わると、
袖から、奇妙なコスプレの男性が歩み出してきた。
ドラクエ3の「勇者」のマネをしているらしかった!
手には、剣すら持っている!
彼の言葉に、一同、仰天した!
「えー、皆さん。
信じていただけないかもわかりませんが、
私が、当楽団の最高責任者であり指揮者の、中島であります!」
会場全体が、爆笑の渦に包まれた!!
「クラシック・コンサートは、ある程度のドレスコードをしなければ、
入ってはいけないような雰囲気かとは思いますが、
この楽団及び、私が指揮を振らせていただくコンサートに関しましては、
ジーパンだろうがステテコだろうが、何でも構いません!
むしろ、パリっとしたドレスコードよりも、
スウェットのような、ラフな格好が好ましいかと思われます。
なぜでしょう?
クラシックという音楽は、本来、「眠くなる音楽」なのです!
α派の分泌を促す音楽ですから、精神がリラックスし、眠くなるのです!
『コンサートで眠るのは、失礼だ』
と思い込んで居られる方々が多いのですが、
実のところ、
お客様方がより多く眠ってしまうコンサートこそが、
『秀逸なクラシック・コンサート』なのであります(笑)
…とは言え、
音楽を、目や耳で堪能されたい方々も、多いことでしょう。
大丈夫です!
第2部までは、寝かせません!
目や耳で楽しんで頂くプログラムを、配慮しておりますゆえ。
第3部は…
何が何でも、皆さんを寝かせてみせます!」
中島さんとやらは、剣を持っていない左手を、ガッツポーズして見せた!
会場一同から、すこぶる盛大な拍手が沸き起こった!!
まだ、演奏が始まっていないというのに(笑)
ところで、
中島さんが演説をしている間に、奏者たちが着席していた。
これも、とても優れた配慮である!
普通、クラシック・コンサートでは、
なぜか、奏者たちがぞろぞろと着席する様子まで、逐一見せられる。
そして、その間およそ3分ほど、暖かい拍手で出迎えなければならない…(笑)
冒頭の30秒程度なら、快く拍手も出来るのだが、
2分も3分も拍手を続けるのは、拷問に近いものがある(笑)
「お愛想」な拍手など、ナイほうが気持ち良いと思うけど、
クラシックというのは、何かと伝統を重んじたがるため、
毎回毎回、どこの会場でも、
同じような、虚しい拍手の「サクラ」が、演奏されることになる…(笑)
「一体、いつになったらこの古臭い習慣を断ち切るんだろう…」
と、ボクは10年以上も前から思っていたのだけれど、
ようやく、「勇者」が現れたようだ!
『クラシックの革命児』



