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エピソード9 『真理の森へ』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月19日
  • 読了時間: 3分

エピソード9

車はやがて、ユスキュラ大学へと到着しました。

歴史を感じさせる、クラシカルな雰囲気の校舎です。

「おぉ!さっそく学校にお目にかかれるのですね!」と武者震いしたのも束の間、

「学食に寄るだけだよ♪ハハっ!」と、トゥーリは笑いました。

学食なら、安く腹ごしらえできるからですね。

フィンランドのレストランの高額さを考えれば、

学食を活用することは、とても賢いと思いました。

「今日だけは、俺のおごりね♪」と、

トゥーリは私に、デイリーランチをごちそうしてくれました。


トゥーリは、シカの肉をほおばりながら話します。

「俺、思うけど、

 翔子にとっての教室は、講堂だけと思わないほうが良いぜ?」

「どういうこと!?」

「たぶん、この国のあらゆることが、君にとって勉強になるよ。

 学食の風景からも学べることあるし、

 学校の外…町角や民家や森の中でも、学ぶこと多いんじゃないかな。」

「そう!私も、そう思うんです。

 だから、寝泊りも学校の寮はヤメたの。

 ホームステイのほうが絶対、面白いんじゃないかって。」

「うん。翔子、寮に泊まらないんだろう?それはナイスチョイスだと思うよ♪

 寮は寮で面白いこといっぱいあるけど、

 寮の仲間とはキャンパスでも会えるしね。」


「…!」

私は、斜め向こうの席に面白い光景を見つけて、

慌ててトゥーリに問いかけました。

「ねぇ?ここの学食は部外者も食べにくるの?」

「いや?基本的に、学生証を持つ人しか入ってこないと思うよ。

 学生証を提示しないと、格安では食べられないからね。」

「…でも、向こうの席、ママさんがいるよ!?」

 若い女性が、赤ちゃんに母乳をあげてる!

「ハハっ!たしかに、日本じゃ考えられない光景だよね!

 フィンランドじゃ珍しくないよ。学校にもママがいる。

 社会福祉が充実しているんだ。この国は。

 子育てだって、例外じゃないんだよ?

 独身で学生の女性なら、

 ヘタに働くより育児に専念したほうが、金持ちになれるんじゃないかな?ハハっ!

 給付金とかベビー服とか、とにかくいっぱい支給されるよ。」

「ベビー服まで!?」

「そうさ♪

 生まれるのが早いが遅いか、

 『出産セット』みたいのが、市だか国だかから贈られてくるんだ。無料だよ?

 ベビー服だけじゃないよ。オムツも防寒具も、オモチャも絵本も。

 ゆりかごの中に、何でも詰め込まれてるよ。

 極端なハナシ、ホームレスでも子育てできるんじゃないかな?ハハっ!

 大学もママに寛大だしね。」


トゥーリの話が終わらないうちに、もっとすさまじい光景を見てしまった!

窓の外で、ランニングウェアを着た女性が、

ベビーカーを押しながら走っているのだ!

「ちょっと、あれ!何してるんですか!?」

「ハハっ!聞くまでもないだろ?ジョギングさ♪

 彼女、しょっちゅうキャンパスを走ってるよ。名前は知らないけどね。」

「ジョギングって…ベビーカー押しながら!?」

「そうだよ。フィンランド人はおおむね、運動が好きなんだ。

 体動かすことが気持ちいいし、ヘルスケアにもなるしね。」

「福祉国家なんだから、

 ヘルスケアとかしなくても、病院が助けてくれるのでは?

 医療費、無料なんでしょう?」

 それくらいは、私でも知っていた。

「そうだよ。国立の病院なら、医療費掛からないね。

 けど、みんなあんまり病院には行かないよ。

 医者が足りないらしくて病院はいつも混んでるし、

 薬飲んだって、健康にはなれないからなぁ。

 俺らはみんな、なるべく自分で健康管理するんだよ。

 日本人とは違って、風邪ひいたくらいじゃ病院になんて行かないさ。ハハっ!」

「…偉いんですね…!フィンランド人って。」

「うん。偉いと思うよ。我ながら。

 教育にしてもそうだけど、無料だからってむやみに甘えたりしないんだ。

 …まぁ、『偉い』っていうか、当然なことだよ。

 国に甘えて、医療費や教育費をムダ遣いしたって、

 その分、税金が跳ね上がって苦しむだけだろ?カンタンな理屈さ。」


『真理の森へ』

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