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エピソード9 『私の彼は有名人』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月27日
  • 読了時間: 2分

エピソード9

「ホストなんかやりたくない」と言っていた彼の気持ちが、

私にも、よくわかる。

私もまた、自分のことを派手に誇張したりアピールしたりするのが、

スキではないのだ。

でも、それが他人のためとなると、感じ方が変わってくるらしい。

彼を応援し、助けるためであれば、

多少の誇張も派手なアピールも、イヤには感じないのだ。


それに、彼としても、

自分で自分を売り込むぶんには嫌気がさしても、

こうして他人が宣伝を肩代わりするぶんには、嫌ではないらしかった。

そうなんだよ。こういうふうにすれば良いのだ。

誰かの魅力を流布するときには、

本人が大声を上げるのではなく、理解している誰かが、代わりにやれば良いのだ。

いや、「代わりにやったほうが」良いのだ。上手くいくのだ。


…この「肩代わりアピール」の経験は、

数年後、私が派遣社員仲介の仕事をするときにも、大いに役に立ってくれた。

私は、この機会を生んでくれた彼に、感謝しても尽くしきれない。



今日もまた、「ラ」の音が出なくなったときに、ライブがお開きになった。

彼はいつもどおり、ロボットみたいに手際よく、譜面台を畳む。

ヤバイヤバイ!また、一緒のひとときが終わってしまう!

私もいつもどおり、焦ってドギマギしはじめた。

いや、いつもとは違った!

私は、また1つ、画期的なアピールトークを思いついてしまった。


「あのぅ…

 良かったら、一緒に、サイゼリヤにでも行きませんか?

 あのぅ…

 『ファン』じゃなくて『スタッフ』だったら、打ち上げに参加する権利、ありますよね…?」

うわぁ!何言ってんのアタシ!?自分でもバカげていると思った。

しかし彼は、プっと笑うと、

「そうだね!打ち上げにいこうかな。手伝ってくれたもんね!」

と、今度は、私のお誘いに応じてくれた!


『私の彼は有名人』

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