エピソード98 『天空の城』
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- 2024年7月22日
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更新日:6月22日
エピソード98
しかし、翌朝のことだった。
ドンドンドンドンドン!
誰かがれいの寝室の戸を叩く。
「れいさん、まだここに居るの?」
あの声はもしや・・・
れいは慌ててドアを開ける。
ア「良かったぁ!まだ居てくれたわ。私、アンリ。カテドラルのシスターよ」

れ「えぇ、もちろん覚えています」
ア「あのね、お願いがあるの!」
今度は10時の鐘を鳴らしてとでも言うのだろうか。
れ「うん?」れいは首をかしげる。
ア「れいさんは冒険が得意なんでしょう?
私を、ジャングルまで連れて行ってください!」
れ「えぇ!?
どういうことですか?ジャングルって?」
ア「えぇと、えぇっとね。
私、アンリっていう名前なの」
れ「えぇ」
ア「この名前はね、両親が付けてくれたんです。
昔の有名な画家さんの名前なの。パパがその画家さんが好きでね」
れ「えーっと?」
ア「大丈夫。話は反れてないから、しばらく聞いて。
その画家さんは、ジャングルの絵ばかり描く人だったの。ジャングルって、険しい森のこと。
パパは森に憧れたんでしょうね。でも平和な人だから、物騒な森になんて行けなくて。
で、アンリという名前を授かった私も、アンリさんの絵をよく見て育ったわ。
そしたら私も、ジャングルっていう場所になんだか興味を持っちゃったの。森に行ってみたいのよ。
でも森には狂暴な魔物が出るわ。キラーパンサーとかいるの。
森に続く原っぱにだって魔物がいるわ。私はそんなの倒せない・・・」
れ「でも、魔物って本当に狂暴です。戦ったことがないなら無理をしないほうがいいような・・・」
ア「でもね!でも私、どうしてもジャングルに行ってみたいの!
危険なのはわかっているわ。冒険がしてみたいの!」
うぅ。「危険を覚悟で冒険がしてみたい」と言われたら、れいに他人を説得することは出来ない・・・。
れ「ジャングルっていうのはわからないんだけど、山や森で良いの?」
ア「えぇ、それでいいわ!深い森に行ってみたいの!」
れ「可能と言えば、可能かもしれないけれど・・・」これまでも何度か護衛を務めてきた。
れ「教会の偉い人の許可は、もう貰えたってことなんですね?」
ア「それが、まだなんですぅ」アンリは舌を出しながら苦笑いをする。
れ「えぇ!私、説得は自信がないわ」
ア「大丈夫!自分でするから!
それもね、れいさんが付き添ってくれてたほうが上手くいくって思うの。
『もうボディーガードは確保しましたよ』って証明できるでしょう?」
れ「まぁ、たしかに・・・」
れいはアンリの依頼に乗ってやることにした。
女の子が冒険したがることを応援するのは、嫌いではない。