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第19節 『世界のはじまり ~花のワルツ~』

  • 執筆者の写真: ・
  • 8月27日
  • 読了時間: 3分

第19節


イカダによる旅は決して楽なものではなかった。

オールを漕がないと浜に戻ってきてしまうからな!と言われたが、ずっとオールを漕いでいるのは腕が痛くて無理がある。休んでは漕ぎ、休んでは漕ぎ、そしてそのインターバルは徐々に長くなっていった。

本来であればマストが、オールの代わりをしてくれるはずだった。風向きが望み通りなら、風を受けるだけでそっちにぐんぐん進んでくれる。しかしこのイカダのマストは、旅立ちの瞬間に巨大魚にへし折られたのだった。

ユキは不意に、イカダの後方からそろっと海に下りはじめた。そして、イカダをビート板のようにして足をバタバタと、犬かきのように泳ぎ始めた。

ノ「・・・何してるの?」

ユ「腕が疲れたから、足で漕ぐことにしたんだよ」

ノアは何も相槌を打たず、でもユキの真似をして海に下りはじめた。

ノ「もう少しそっちに寄って?」

パチャパチャ パチャパチャ

ユ「君は、泳げるのか?」

ノ「当然よ。少しはね」ノアは誇らしげに言った。

ユ「いいや・・・これは意外と重要だ」

ノ「え?」

ユ「腕を休めるためだけじゃなく、君ちょっとそうやってバタバタやったほうがいい」

ノ「どういうこと?」

ユ「パチャパチャやる音を聞けばわかる。

 泳げるっていうほど泳げなさそうだ。

 もしイカダから落ちたとき、高い波がかぶってきたらどうする?君、高波をかいくぐれるほどは泳げないだろう?」

ノ「そうかも」

ユ「いずれ無事どこかの島に着いても、しばらくそうやって泳ぎの練習をしたほうがいいよ。海旅が続くかもしれないからな」

海にはしばらく、大きな大きな木製のビート板が浮いていた。

海鳥たちは見慣れない光景に首をかしげなら、でも我関せずに二人を追い越していった。



ある時は二人でオールを漕いでいた。

すると、正面から突然、何かが飛んできた!

弾丸のごとく猛スピードで飛んできたそれは、2人の間を猛烈に過ぎ去っていった!その風圧で思わずノアは海に落ちる。

ノ「ぷはぁ!大きな魚!?」

ユ「いいや、魔物だ!」

飛んできたものの正体はとつげきうおだった!

とつげきうお
とつげきうお

ノ「向こうにも飛んでる!」ノアは前方数十メートルにも同じように飛来するものの影を見た!

ユ「なに!?

ユキはオールを置き、ヤリを構えた。

ユ「君はさっきみたいにバタバタ泳ぐんだ!顔を伏せて!」

ノ「来た!右のほう!」

ユキはノアの声に反応して右斜め前を向いた!とつげきうおが飛んでくる!

ユキは真っ向からヤリで迎え討った!

ビューーーン!

ぐしゃっ!

ユ「うわぁ!」

ノ「ユキ!」

飛んでくる衝撃に耐えられずユキはイカダから海に落ちたが、しかし見事とつげきうおをやっつけた!

チャリーン!

やっつけたとつげきうおはお金に変わり、イカダの上にポトっと落ちた。

2人はイカダに這い上がる。落ちたものを見つける。

ユ「おぉ!」

ノ「『1』って書いてある」

ユ「1・・・ゴールド?たしかカネのことを5ゴールドとか1000ゴールドとか言っていた。メロンは5ゴールドだ」

ノ「これを5つ集めて、ようやくあのフルーツが1つ買えるの?」

ユ「おそらく」

女たちは魔物を倒してフルーツなど買えそうにもないから、フルーツをちらつかせる男にほいほいと着いていってしまうようになるのだ。

ノ「どこかの村の寝床は、何ゴールドなの?」

ユ「わからないが、これを集めなくてはいけないってことだ。

 食事も、寝床も、その日のたんびにこれが要るんだろう」

ノ「でもユキはあの魚を倒せるわ!」

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