第20節 『世界のはじまり ~花のワルツ~』
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- 8月27日
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第20節
日の傾きとともとに、とつげきうおの飛来は増えていった。
ユキはまたヤリを構えて腰を入れたが、いつも見事に倒せるわけではないのだった。とつげきうおは鋭い背ビレでユキの体に切り傷を与えていく。
ユキはモリで魚を獲るときのように、深く集中した。
ユ「魔物も動物もそう変わらない!」
眼光鋭くとつげきうおの動きを凝視し続ける!
ユ「えいっ!」
ズシャー!
ノ「やっつけたわ!」
ジャバーン。また衝撃と同時に海に落ちるが、とにかくとつげきうおをやっつけた。
しかし・・・
チャリーン!・・・ちゃぽん。
変化したゴールドは、今度は都合よくイカダの上には落ちてくれない!非情にも海の中に落ちてしまうのだった。
ノ「あぁん!」
ユ「待て!」
ユキはすかさず潜ってコインを追いかける!しかし瞬く間に、なけなしの1ゴールドは海の奥深くへと沈んでいってしまうのだった・・・
ユ「た、大変だな・・・おカネを稼ぐのって・・・!」
三度とつげきうおに挑む。挑むというか、挑まざるを得ない状況だが・・・。
ノ「わたし、イカダの上にいてもいい?」
ユ「大丈夫なのか?」
ノ「しゃがんでるから」
ユ「君を狙ってきたらすぐに飛び逃げるんだぞ」
ノ「えぇ」
ユ「さぁこい!」しかしユキは、とつげきうおが自分に向かってくるように威嚇の大声を上げ、大きな動作でヤリを構えた。
ノ「きた!」
ビューーーン!
とつげきうおはユキを狙って飛んできた!
ユ「えぇい!」ユキは真正面から迎え撃つ!
グシャァ!
とつげきうおをやっつけた!
ピキーン!
しかしゴールドはまた、イカダの外へと弾き飛んでしまう!
ユ「あぁ!」ユキは悔しさに顔をゆがめる。
ノ「えぇい!!」
なんとその瞬間、ノアはカエルのように威勢よく、ゴールドに向かって飛び跳ねた!
ジャポーン!ノアは海の中に豪快に飛び落ちる!
ユ「大丈夫か!」
ノアの体はイカダから3メートルも遠く離れてしまう!
ノ「あ!あ!」ノアは救命具を失い焦り、ジタバタと懸命にイカダへと泳ぎ戻る!
ユキはノアに手を伸ばす!
ユ「よぉし掴まれ!」
ノアは無事、イカダに引き上げられる。
ノ「はぁ、はぁ!
やったわ!おカネを捕まえた!」
ノアは海に落ちても、コインを離さなかった!
ユ「でかしたぞ!わはははははは!」
ノ「やったぁ!うれしい!!」
ノアは、大事な大事なコインを掴み取れたことが嬉しかったのか?それもそうだが、自分がユキの役に立てたことが嬉しかった。これまでいつも、ユキに助けられっぱなしだったのだから。
ユ「君すごい反射神経だな!」
ノ「うふふ。踊ってばかりいるんだもの」そうだ。踊りの素養が役に立ったのだった。誰よりもキビキビと踊ってきたその努力は、思いもかけない場面で彼女を救うのだった。そして大切な人を。
ノ「うふふ。はい」ノアはニコニコと、コインをユキに渡そうとした。
しかし、
ユ「いいや、それは君が持っていなよ。
君が、つかみ取ったんだからさ♪」
ノ「でも、ユキが倒したのよ?」
ユ「そうだね。どっちのものってこともないんだよ。2人で得たお金は、2人のものだ。
でも、それは君が持っていたらいい」
ノ「うふふ。ありがとう」
お金を得るというのは、とても大変だ。
そしてお金を得るというのは、なんだか妙に嬉しいことのようだった。
2人はお金に中毒しはじめたのだろうか?
いいや、そうではないだろう。
お金を稼ぐ苦労を、その最初の1歩を乗り越えた喜びだ。