第31節 『世界のはじまり ~花のワルツ~』
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- 8月27日
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第31節

モ「ところで、あんたたちの旅はどこに向かってるんだい?」
2人は顔を見合わせた。
モ「あぁおかみさん、番茶を3つおくれ!
2つは大盛りにしてやってくれ?贈り物なんだからね。
へへへ。あたしのおごりだ。話すとノドが渇くね」
ノ「どうもありがとう」
ユ「特にあてもないのです。先のことは考えてなくて、いつも目の前のことに精いっぱい、かな。
今は、田んぼに慣れるのに精いっぱいです。そしてお金の扱いに慣れるのに精いっぱいです」
ノ「この村では、見たことのないものがたくさん見れて楽しいです」
モ「はは。そうかそうか。
いつまでもこの村にいたっていいんだろうけど、次の風向きは考えておいたほうがいいだろな」
また2人は顔を見合わせた。
ユ「お金ってものが少しわかってきたけど・・・できればお金がない国に行きたい気がします。
だって、食料が欲しいなら食料をとってくればいいのに、わざわざお金を稼いでそれを食料に換えて・・・ってなんだか遠まわしな仕組みに思えて仕方ない。
コーミズにはこんなにたくさんキラキラしたものはなかったけど、でも少しなら母親やお婆ちゃんが作って娘に与えてくれたものでした」
ノ「そうだわ。村の大人がくれたわ」
モ「ふうん。じゃぁ海を越えるんだね!」
ノ・ユ「えぇ!」
ユ「コーミズやクダカに戻りたくはないんです」
モ「来たとこに戻れってハナシじゃなくてさ。
あたしもよく知らないけど、東の海の先にはお金のない島があるって聞いたことあるよ。そういうとこを探してるんじゃないのか?って。イースター島とかいったかな。
それに西の村はあまり勧めないな。あそこは酒好きの男が多くてさ。か弱いガールフレンドを連れていくところじゃないよ。はは。
南にずーっと行くと大きな城があるけど、そこはもっとお金が必要だよ」
ノ「お酒の盛んなところは嫌かも・・・」
ユ「でも僕たち、ここに着く直前に舟を壊してしまったんです」
モ「舟はこの村でも造ってるけど・・・余所者に売ってくれんのかな?それに高いだろうしなぁ」
ノ「舟も買うものなのですね!幾らくらいするの?」
モ「知らないよ!はは。
1000か、ひょっとしたら2000か・・・」
ノ・ユ「高い!!」
ユ「やっぱりまたイカダを造るか」
モ「イカダ?イカダじゃ長い航海は無理だよ!
長い航海にはこの村の舟は向くんだけどね」
ノ「あのクモみたいな脚がある舟のこと?」
モ「そうそう。浮き脚が付いてるから、ひっくり返りにくいんだ。
長い航海をするならそういうのが要ると思うね。
村長さんにでも掛け合ってみたらいいんじゃないか?ダメ元でさ。ひょっとしたらボロい舟くらいは格安で譲ってくれたりして」
ユ「村長さんが?」
モ「いや、わからないよ?でもそこらの商人にせがむよりは脈があるだろうさ」
食事を終えると、2人は田んぼに戻ることにした。モモも途中まで着いていくという。
ノ「ねぇ、モモさんはどうしてそんなに美人なの?」ノアは聞きたかったことの1つをモモに尋ねた。
モ「ははは。ありがたいもんだ」
ノ「それで、どうして?」
モ「そりゃオシャレするからだよ。まつ毛をこう、バチっと上に向かせるのさ!」
ノ「でも、それだけじゃない気がするわ?」
モ「・・・。アンタ鋭いなぁ!あっはははは」
ユ「何か隠してますね?」話が前に進まないことを、ユキも察した。
「ははは。隠してるってわけでもないんだよ。話したって伝わりっこないモンがたくさんあるんだ。あたしには」
ノ「でも、話してみて?」
モ「そうだな。
旅の中でね・・・・・・」
ユ「旅の中で?」
モ「秘伝書を読んだんだ。秘伝の書を」
ノ「秘伝書?」
モ「あぁ。秘伝書なんて色々あるんだろうが、あたしは美貌に関する秘伝書を見つけた」
ユ「あるんですか!?そんなもの!」
モ「はははは!あるって言ったら信じるのかい?無いから探すなって言ったら信じるのかい?
言ったろ?だから話したくないんだよ。複雑なハナシなんだからさ。
でも結論だけかいつまんで言うなら、あたしはそれを見つけちまったんだ。旅の中でね」
ノ「巻き物の店に行けばいいのかしら?」
ユ「秘伝書って町で買えるんだろうか」
モ「そういうモンじゃないんだよ。カネがありゃ買えるってもんじゃない。大きな街なら売ってるってもんじゃない。まぁ秘伝書ってのはそういう類のモンさ。
言ったろ?5年も旅してきたんだ。・・・4年かな?忘れちまったけど。ははは」
ユ「町で歌ってばかりいたわけじゃないんだ・・・!」
モ「山にも行った。海にも行った。洞窟にも潜ったよ。ははは」
ノ「私もそれを見つけられるかしら?」
モ「うーん。無理だろうな!」
ノ「えー!」
ユ「はっきり言うんですね。それが気持ちいいけど」
モ「だって、平穏を求めてさすらってんだろ?平和な村を見つけたら旅を終えるんだろ?それじゃ無理だな」
ノ「えぇー」
ユ「そうか」
モ「ははは。欲しいなら求めることさ。求め続けるなら見つけるよ。人生ってのはそれぞれ、自分が欲しいもんを求め続けただけのハナシさ。
アタシは平凡な人生を求めなかった。苦労してでも欲しいものがあった。それだけのこと」
ノ「そっかぁ」
モ「ははは。ノアは可愛くなりたいのか?」
ノ「えぇ?そのぅ」
モ「ははは!充分可愛いよ!踊りをやってきて良かったな♪」
濃い情報がたくさん手に入った。