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16 天使からのナゾナゾ

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月3日
  • 読了時間: 5分

16 天使からのナゾナゾ


私は、

こんなにたくさん親にウソをついたのは、初めてだった!

そして、最後でも、あった。

なにしろ、

私は頭の回転がニブいので、

「自分には、ウソを付くことなど出来ない」と思っていた。

だから、

端から、ウソを付くという行為自体を、あきらめていた。

…幸い、

これといってウソを付かなければならない出来事も無かったし、

なんだかんだ言って両親は、私に甘かった。


あんなお粗末なウソでも、私にとっては上出来だった!

自分で自分に、感心してしまった。

「その気になれば、何でも出来ちゃうもんだなぁ♪」

アニメのキャラクターみたいに、鼻をふふんとこすった。



私は、バス停までは、走った。

「しょうがないから、車で送ってあげるわよ!」

なんてブツブツ言いながら、

お母さんが追いかけてくる可能性が、あったから。

市川駅に向かうバスに乗って、ようやく安心出来た。



駅は、

いつも通り、通勤や通学の人々で、にぎわっていた。

この時間に、この年齢のコが、私服で歩いているというのは、

明らかに、違和感があった。

私は、みんなが私を見て、いぶかしげているような気がした。

…もちろん、そんなハズは無かった。

この忙しい朝の時間に、

何の変哲もない小さな少女を凝視する者など、居るはずもない。


…もし、

チアキみたいにカワイかったなら、

そうもいかないのだろうなぁと、思った。

カワイイ女のコのことは、みんな反射的に目をやるし、見続ける。

それが15歳程度で、私服を着ていれば、

「…あれ?学校は??」ということにも、なるだろう。それはマズい。

私は、先日トモコさんが言っていた、

「『モテ過ぎ」も煩(わずら)わしいモンなのよ!」

という言葉のイミが、解った気がした。

「タレントさんは、大変だぁ。

 おちおちコンビニにも行けやしないんだぁ。」

私は、そんな一人ごとをつぶやいていた。

もし、私がチアキみたいにカワイくても、

タレントさんには、ならないだろう。

ぼーっと、へらへらしながら、ノン気に街を歩いていたいから。



私は、

券売機の前で、ハっと我に返った!

「何駅行きの切符を買えばイイんだろう…!?」

羽田か成田かの2択であることぐらいは、かろうじて、解っていた。

でも、

沖縄に行くためには、どちらの空港が正解なのだろう!?

誰かに聞いてみようとも考えたけれど、

この格好で、無闇に大人の人たちと話すのは、マズいと思った。

うーん。マイった…



私は、ハっと思いついた!

「天使カンニング」が、使えないだろうか!?

「お願い!私の天使ちゃん…!!」

恥ずかし気もなく、心の中でそう叫び、目をギュっとつむった。


…やったぁ!!

まぶたの裏に見えたのは、

1枚の、小さな小さな、白い羽根だった…。

「は!?

 私は、『羽田か成田か』を、聞いてるんだよ?」

思わず、声に出してしまった。


もう一度、

「お願い!私の天使ちゃん…!!」

と、胸の前で手を組んで、心の中で叫んだ。

…やっぱり、

見えたのは、小さな羽根だけだった…



私は、ハっと気付いた!

この羽根は、

「情報を伝えているのは、天使ですよ」

ということを、訴えているのだろうと、思った。

「わかったよー!

 あなたは私の天使ちゃんなんでしょぉ?

 それはイイから、行き先を、教えて?」


私は、再び、目を閉じてみたけれど、

3度目もやはり、白い羽根しか、見えなかった…

「もぉ、役立たず!!」

私は、ロコツにふくれっ面をしてしまった。



「はぁあ!どーーしよう!!」

投げやりに溜め息を付くと、お腹が減っている自分に気付いた。

気分転換も兼ねて、

コンビニで朝食を買ってくることにした。

コンビニで菓子パンを選んでいて、ハっと気付いた!

「ヤバい!店員さんにマジマジ見られちゃうじゃん!!」

私は、ドキドキバクバクしながら、

レジに並び、順番を待った。

脇の下にどっと汗をかいてくるのを、感じた。

私は、

出来るだけそしらぬ顔で、会計を済ませ、そそくさと店を出た。

「あー怖かった!!」

…一体、

コンビニでパンを買うだけで、犯罪者のようにオドオドするなんて、

フツウに考えて、有り得ない話だ。

けれども、

この時の私の境遇では、それぐらい、一大事なのだ。

こういうのは、文章を読んでいるだけじゃ、解らないと思う。


…でも、よくよく考えてみると、

この朝のクソ忙しい時間に、

お客の顔を一人ひとり、まじまじと眺め、

私服の若いコがいたからといって、交番に通報するとも、思えなかった(笑)



頭を使って、よくよく考えてみさえすれば、

色んなことが解るものなのだなぁと、思った。

反射的に感じたことがいつも真実とは、限らないのだ。

私は、この時から、

「状況を冷静に分析する」

ということが、少し、出来るようになってきた。

これが出来るようになると、日常生活で感じる様々な不安が、

たいていは取り越し苦労に過ぎないということが、解ってきた。

私がオドオドする回数は、だんだんと、減っていったよ。



早速、菓子パンをかじりながら、券売機の前に戻った。

…私はそもそも、

成田や羽田がどの辺りにあるものなのか、よく解ってなかった(笑)

1時間で行けるものなのか?半日掛かるのか?

券売機の上に、大きな路線図が掲げてあり、値段も併記されている。

私は、

端から端までなめ回すように見て、成田と羽田を見つけた。

どちらも、1,000円程度で行けるようだった。

…けれども、始末の悪いことに、

「成田空港」とか「成田空港第2ビル」とか、ややこしい名前の駅が、

いくつもあった…。羽田周辺も同様に、ややこしいのだ!

私はいよいよ、頭がパニックになってきた。

けれど、ココで泣き出すのは、マズい…。

「落ち着け、ゆっこ、落ち着けぇ…!」

と、自分で自分を応援した。



…ヨシ。

とりあえず、まずは、

「成田方面」か「羽田方面」かを、ハッキリさせよう。

私は再び、

頭上の巨大路線図を、じーっと眺めた。


…うーん。

成田は、市川から見て、東のほうにある。

羽田は、市川から見て、西のほうにある。

交通機関は、

目的地と同じ方面から乗ったほうが、効率がイイはずだ。


…では、

沖縄は、どっち方面にある…?

それくらいは、私でもわかる!西であり、南だ!

ということは、

東のほうにある成田空港から、西に飛ぶのは、

いかんせん、効率が悪そうだぞ…?

じゃぁ、西のほうにある、羽田が正解!?


…待てよ!

じゃぁ、ほとんど真北にある北海道は、

どっちの空港から飛ぶの!?

方面が西か東かだけで、空港が分けられてるの!?

…うーん、そうとも思えない…。

…ありゃりゃ。

振り出しに戻ってきちゃった…(笑)



私は、再三度、巨大な路線図を眺めた。

もう、このクイズを考えだしてから、10分以上が経っていた。

10分以上、券売機のまん前に、突っ立っていた…


成田…羽田…成田…羽田…成田…羽田…


……?

羽田…?

…羽……田…??


「わかったー!そういうことだったのかぁ♪」

私はまた、恥ずかしげもなく、

雑踏の中で大声を上げてしまった(笑)

「天使カンニング」が見せてくれた「羽」の映像は、

「私は天使ですよ♪」ってイミじゃぁ、無かったんだ!

「羽田」の「羽」を、絵に変換して、知らせてくれてたんだー!

「そっかそっかー♪

 もぉー、『役立たず』なんて言っちゃって、ゴメンね♪」

私は、

聞いているのかどうかも知らない私の天使ちゃんに、

照れ交じりにおわびを言っていた。



『星砂の招待状 -True Love-』

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