27 無知の極み
- ・
- 2023年3月3日
- 読了時間: 3分
27 無知の極み
私は、
なぜお姉さんが焦っているのか、状況が飲み込めなかったけれど、
とにかく、迷惑を掛けないように、促されるままに駆け出した。
電車の改札口のようなものを通る際、
スタッフのお姉さんに、
「マイルは貯めていらっしゃいますか?」と、尋ねられた。
私は、
「え?いえ、メールは読んだらすぐ、
大事なモノ以外は、削除しちゃうんですけど…」
と、真顔で答えた。
…何のために、この緊急時にそんな悠長な質問をするのか、
さっぱり、イミが解らなかった…
私を探して息を切らしてくれたあのお姉さんは、
真横でそれを耳にして、爆笑をこらえきれず、
ついに、
床にくずれ落ちて、「ぶはっ!!」と破裂的な吹き出し笑いをこぼした。
…彼女は、私のことを笑っていたのだけれど、
「お客を嘲笑する」という大失態を認めるワケにはいかなかったようで、
あわてて、「ゴホッ!ゴホッ!」とむせ返ったフリをしていた(笑)
…そうなのだ。
私は、「マイル」と「メール」を、カン違いしたのだ(笑)
くずれ落ちたお姉さんは、すぐに体勢を立て直すと、
私の背中にそっと触れ押しながら、機内へと誘導してくれた。
ユキコが「ズブのシロウト」であると察したらしく、
座席までしっかり案内してくれ、シートベルトまで、締めてくれた。
周りの人たちは、「一体、何があったのか?」と、
ヒソヒソ声を上げていた。
お姉さんは、最後に、私に教えてくれた。
「あの…お客様、
次回からは、離陸時刻の20分前に、
搭乗を開始して下さるよう、お願い申し上げます。」
私はそこで、ようやく、
「神隠し」やお姉さんのあわてっぷりのイミが、解ったのである…
お姉さんが自分の持ち場に戻っていっても、
私に安らぎというものは、訪れなかった…
機内の大型スクリーンでは、
救急救命胴衣の使用方法を説明していた。
頭のニブい私には、とてもじゃないけれど、
あのようなビデオを見るだけでは、手順を覚えられそうもなかった!
しかも、
搭乗が遅れてしまったせいか、ビデオはすでに途中だった…
私は、
また、脇の下にどっと汗をかいた!
どうしよう!?
コレがわからないと、死んでしまうんじゃないのか!?
…しかし、
どうにも周囲の人たちは、手順説明のビデオを、ロクに見ていなかった。
眺めている人もいたけれど、
懸命に手順を覚えようという気合は、微塵も感じられない…
一体みんな、死を恐れないほどに、肝が据(す)わっているんだろうか!?
「私の家族が、飛行機旅行をさっぱりしたがらないのは、
こういう理由だったのか!?」
…と思ったのも束の間…
手順説明のビデオは、
どうやら、またイチから、再生し始めてくれた(笑)
しかも、その数分後には、
美人の乗務員さんが前に出て、
手順説明をご丁寧に実演してくれるではないか!
…私の取り越し苦労も、大概にして欲しいモンだった(笑)
…かと言って、
乗務員さんの実演を見ても、私には、ほとんど覚えられなかった…
『星砂の招待状 -True Love-』



