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30 安宿街の生き方

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月11日
  • 読了時間: 6分

30 安宿街の生き方

 旅行代理店を後にした僕は、

その通り沿いにあるカフェを、テキトーに選んで、入った。


 経営しているのは現地のヒトだったけれど、

頭をきちっとポマードで固めて、真っ白いYシャツを着て、

キビキビと仕事をしていた。


 メニューを開いてみると、

「ハンバーガー ウィズ チキン」とか、

「フレンチトースト ウィズ アイスクリーム」とか、

およそ、ベトナムらしくナイ料理名が、並んでいた。

 フォーとか生春巻きとか、そういうのは1コも無かった。

 けれども、

昨日泊まった宿の周辺と同じように、

建物は、入り口を開け放していて、エアコンなんかも点けて無かった。

それで充分、涼しかった。

照明も、設置されてはいるけれど、点けてはいなかった。

それで充分、食事も出来たし、読書も出来たよ♪


…つまり、この辺りの店というのは、

「欧米諸国のセンスと、ベトナム人の感覚とを、足して2で割ったようなカンジ」

 だった。

彼らは、オシャレやアートには気を遣うけれど、

余計な電気やお金は、使わないようだった。



 僕は、暑さであんまり食欲が無かったモンだから、

フレンチトーストを頼んだ。そして、フルーツシェイクを付けた。

 フレンチトーストは、フツーに、美味しかった♪

 アメリカのような大雑把な味ではなく、ヨーロッパ的な、こざっぱりした味だった。

 もちろん、盛り付けも、ね♪。

 …それが、たったの2ドルばかしだった。


 シェイクは、ちょっと新鮮だった!

 シェイクと言えば、

日本人の感覚だと、半解けのソフトクリームみたいのを、連想するよね?

 でも、この辺の地域のシェイクは、乳成分は、含まないんだ!

 どうやら、

フルーツと氷をミキサーに掛けてシャーベット状にしたモノを、指すようだった。

 …コレが、甘すぎなくて、冷たくて、果汁が摂取出来て、

とっても重宝するドリンクになった♪

 そんで、たいてい、2ドルもしなかった♪



 …それにしても、

この国は、ホンっっっトに、旅人を飽きさせない!!


 僕が、シェイクをすすりながらぼーっと涼んでいると、

道すがらの誰かに、声を掛けられた!

 …僕は、店の中でも、通り際に座っていたからさ?


 声を掛けてきたのは、いわゆる、行商だった。

 それは、まぁ、イイんだけど、

売っているものが、何かっていうと、

「赤べこ」なんだよ!!(笑)


 「赤べこ」って、知ってる??

会津地方の名産品で、真っ赤な牛の置物なんだけど、

首の部分がひょこひょこ動いて、コミカルなんだよね♪

 …んで、

彼が売ってたのは、厳密には、「赤べこ」ではなくって、

「赤べこみたいに首がひょこひょこ動く、犬」だった(笑)


 会津で赤べこを売るのは、

厄除けや健康祈願の意味合いがあったり、

会津の象徴としての、特産性があるからだよね?

 …でも、

ホーチミンと犬は、何の関係も、ナイよ(笑)


 一体、誰が、

はるばるホーチミンまで来て、

ひょこひょこ動く犬の置物を、得体の知れない行商人から、買うんだろうか??

 …この行商人とは、

ホーチミンに滞在している間に、計3回も出くわしたんだけど、

「犬」が売れている気配は、いっこうに、無かった(笑)


 それなのに彼は、

常に、突き抜けるような笑顔を絶やさずに、

道行くヒトたちに、声を掛け続けていた…



 僕は、時間が有り余っていたから、

更に食べ物を注文しつつ、

小説を読み読み、通り沿いの席で、ヒマを潰していた。


 すると、次の「刺客」が、現れた!!

 彼は、60代にもなろうかという、

背の小さな、白髪のたくさん混じった、爺さんだった。 

 爺さんは、汗ばむ気候には不釣合いな、黒いトレンチコートを羽織っていた。


「買っていかないか?」と不敵な笑顔で言うから、

「おじさん、何売ってんの?」と、ヤケクソで日本語のまま返答すると、

彼はなんと、トレンチコートの前合わせを、

変質者みたいに、バサ!っと開いた…!!


 …彼のトレンチコートの裏地には、

なんと、

無数の「ベルト」が、吊り下げられていた…!!


「おじさん、『ベルト売り』なの…!!??」

 僕は爆笑のあまり、アイスコーヒーを噴き出しちゃったよ!!


 彼は、歯抜けのコミカルな笑顔を振りかざして、

「コッチのはどうか?コレは金色だぞ!!」

なんて、「れんぞくこうげき」を繰り出してきた!!


 しかし ぱるこは 「ひもパン」を はいていた!!


 …つまり、

ベルトなんて一切必要としていなかったから、

彼の「れんぞくこうげき」にも、一切、ダメージを受けなかった…(笑)



 …しっかし、このおじさん、

もう少し注意深く、僕の姿を観察すれば、

ベルトが不要な服装をしているってことに、気付けるだろうになぁ…(笑)


どうも、彼らは、

「モノを売ることに躍起になっている」のではなく、

「ノリのよそうな旅人とジャレ合って、楽しんでいる」

ような気がして、ならなかった(笑)



 彼らは、恐らく、ホームレスだろうさ。

 んで、近くの市場に行って、

気に入ったモノを、大量に買い込んでくるんだよ。


 それを、「ビギナー旅行者」を相手に、高値で売りつけるのさ。

 住宅ローンも無く、毎日オンナジ格好でも気にならない彼らは、

「犬」やベルトが、3日に1コしか売れないとしても、

それなりに、生きていけちゃうのさ(笑)



iphoneもパソコンも、ヴィトンもアルマーニも持っていないのに、

取引先にペコペコ頭を下げて、神経すり減らして、

家では奥さんに「給料が少ない!」とドヤされて、

胃を壊しながら険しい顔で生きるサラリーマンより、

ずーーーーっと、幸せそうな顔をしていた!!!

健康保険も薬も持って無いハズなのに、

彼らのほうがずーーーーっと、健康そうだった!!!


彼らはまるで、

「ねむりあの国」の住人たちみたいだった(笑)


彼らの身なりを見て、

「フケツだ!」「野蛮だ!」「馬鹿だ!」と思い込み、

コミュニケーションを遮断してしまう「セレブ」や「エリート」たちは、

彼らが体現している、「本当の真理」に、

いつまでも、気付くことが出来ないんだよ(笑)

すぐ目の前に、

仏陀やキリストがウロついてるっていうのに、

「セレブ」や「エリート」や、その他多くの一般大衆たちは、

彼らが誇っている立派なオーラ・レベルに、気付けないのさ♪



 ねむりあの国の住人たちと、ホームレスの行商たちには、

確かに、共通点が在った。

 それは、

「価値観が、一般常識から、180度突き抜けてる」

 ってコトなんだよ!!!

彼らは、いずれも、

一般常識的な振る舞いや生き方が、

「出来ない」ってワケではナイし、「逃げてる」ワケでも、ナイんだ。

そうじゃなくて、

一通り、しっかりと経験した後で、

「手放してしまった」「卒業してしまった」ヒトたちなのさ!!!


「出来ない」のと、「やらない」のとでは、

天と地ほど、違うんだぜ??



 僕がこういう価値観を持っていると、

時々、世捨て人みたいなヒトが、

シンパシーを感じて、寄ってくるんだけどさ?

彼らは、ただ世の中を憂いたり蔑んだりしてるだけで、

「生のチャレンジ」からは、逃げ続けてるヒトばっかりなんだよ。


 僕の価値観は、

そういうのとは、違うのさ!!


世間一般と同じようなことを、一通り経験して、

優れた社会性や知性や、「サービス残業でも黙々とやり抜くパワフルさ」を身に付けて、

その上で、

「新しい価値観を生きる」ってコトなんだよ♪


 だから、

「ヒッピー」と呼ばれるような人種とも、僕は、気が合わない。

彼らもまた、

貧乏放浪を好み、1対1の恋愛観に縛られず、

賃金労働や義務に囚われずに生きているけれど、

彼らはただ、お酒や大麻やセックスに、「溺れてる」だけさ。

んで、人生から「逃避している」だけなんだ。


…「ヒッピー」を自負していないとしても、

「レイヴ」や「フルムーン・パーティ」や「クラブ」みたいな、

酒とタバコとドラッグとセックスの臭いがする場所に、好んで出入りするような人たちとは、

気が合わない。

東南アジアの安宿街に、何ヶ月も滞在し続けて、

朝までお酒を飲み明かしてばっかりいるような人たちとも、

僕は、気が合わない。



『永遠の楽園』

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