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39 国境の「人造人間」たち…

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月11日
  • 読了時間: 4分

39 国境の「人造人間」たち…

 いつの間にか、眠りに落ちていたよ。

 そしてバスは、お昼の12時頃に、国境に到着した!!



 バスを降りると、

真上から照りつける太陽が、ジリジリ、ジリジリと、肌を突き刺してきた!


 国境は、

だだっ広い荒野の中に、幾つかの簡易テントが設けられていて、

その中で、様々な手続きをする仕組みだった。

 飛行機で入国する場合は、

エアコンの効いた空港という快適空間で、諸々の手続きが行えるけれど、

陸路で国境を越える場合は、それとは大違いさ。

 「圧倒的に突き放された環境」の中で、

手続きを済まさなければ、ならなかった…



 僕らが乗ってきたバスには、

運転手のほかに、「ツアーガイド」を名乗る青年が、乗っていた。

「私が、皆さんの旅のお手伝いをします♪」

 とかなんとか、威勢よく、豪語していた。

 …けれど、

バスが国境に着いた途端、彼の姿は、どこにも見えなかった(笑)



 僕は、出入国手続きの流れが、サッパリ解っていなかった。

 とりあえず、

他の旅行者たちの後ろに、金魚のフンのようにくっついていって、

みんなと同じように、一番手前のテントの前に、並んだ。


 背伸びをして、テントの中の様子をのぞいてみると、

「ふかみどりのめいさいふく」と、「おうどいろのヘルメット」と、

「じゅうしんのながいライフル」と、「きたえぬかれたきんにく」を「そうび」した兵士が、

怖い顔をして、エラそうに、出国のスタンプを押していた。

 …その時の僕には、

それが、出国のスタンプであることすら、解ってなかったけど…(笑)


 兵士は、

「スパン!スパン!」と、必要以上に大きな音を立てて、スタンプを押していった。

 そして、次のヒトのパスポートを催促する時は、

ギロついた目つきで、その旅行者を睨みつけ、

指だけをひょいっと曲げて、「寄越せ!」と合図を送った。


「怖えぇぇぇーーー!!!」

 と、思った。

「レベル1」の僕には、とても敵いそうにない…

 ちなみに、僕は、

ホンモノのライフルを見たのは、この時が、生まれて初めてのことだった。


 彼の、あの恐ろしい態度には、

不振な入国者を威嚇するような意味合いが、あったのだろう。

 今なら、それが解るけれど、

無知な当時の僕は、

ただ単に、「野犬みたいに凶暴なヒトなのかな」と、思い込んでいた。



 汗をジリジリかきながら、列が小さくなるのを待っていた。

 僕は、仲間もおらず、勝手もわからず、とても不安で、

あぶら汗をだらだらと流しながら、鼓動をドキドキと鳴らしながら、

兵士の様子と自分のパスポートを、交互ににらめっこしていた。

 その様子を見ていた、カナダ人の男性(バック)パッカーが、

「やぁ♪キミ、1人なの?」と、笑顔で話し掛けてきてくれた♪


 僕は、

「これがファースト・トリップなもんで、

 システムが、よくワカラナイんだけど…」

 と、不安げに、本音を言った。

 彼は、何かを察したらしく、

「ちょっと、パスポートを見せてくれるかい?」

 と言って、僕のパスポートをのぞき込んだ。

「キミ、ビザがナイじゃないか!!!

 ホーチミンで取ってこなかったのかい!?」

 とても慌てた口調で、そう言った。

「…そう言えば、

 ホーチミンのツーリスト・カンパニーのスタッフが、

 ビザがナンチャラって言ってたっけ…

 でも、『国境で取得出来るから、そのまま行けばいい』

 って、言ってた気がするよ?」

「国境でも、取れるは取れるが、

 それだったら、今ココに並んでも、イミがナイよ!

 その辺のどれかのテントで、ビザがGETできるハズだから、

 まず先に、ビザ・カウンターを探してきてごらん!!」

「えぇー!?」

 もう少しで僕の番なのに

20分も炎天下に並んだ甲斐も無く、

僕は、違うカウンターを探さなければならないようだった!!



 僕は、みんなから離れ、

1人で、国境の荒野を、ウロウロ徘徊し始めた!

 明らかに、「不審な入国者」だった(笑)


 テントの中に居た怖い兵士とほとんどウリ二つのような、人造人間のような兵士たちが、

「オマエ、何をやっているんだ!!」

 と、僕をあちこち、追いたて回した。


 僕は、

「自分が、何をしなければならないか」すら、よく解っておらず、

兵士たちに何と説明してイイのかも、わからなかった(笑)

 なにしろ、

「ビザを買うために、ビザのカウンターを探しておいで」

 という、カナダ人の彼の英語すら、よく理解出来ていなかったのさ。

 


 僕は、こってり苦悩した。

 「何やっているんだ!!」と威圧されても、

次の行動の指針を、この人造人間たちに頼るしか、なかったからさ。

「あっちに行け!」と、銃で威嚇されても、

彼らの懐に飛び込んでいってパスポートを見せ、

「ビザが未取得である」という現状を理解してもらえることを、

ただただ、期待する以外に、無かった…!!



 …10分も、灼熱の荒野のテントを歩き巡り、人造人間たちに追い立てられた挙句、

結局は、「最初のテント」に、舞い戻ってきた(笑)


 …なぜかって?


 ビザが未取得であることに気付いてくれた、人造人間23号が、

「そのままでOKだから、最初のテントに行け!!」

 と、僕を追いやったからさ。


 そして、

すでに誰も居なくなってしまった、静まり返ったテントで、

出国のスタンプを押してもらった。

 乱暴に押される、「スパーン!」というスタンプ音は、

まるで銃声みたいに、僕の鼓膜に響き渡った…!!

 人造人間1号は、ノロマ極まりナイ僕を見て、

「オマエは、ハポネス(日本人)か?」

 と、ベトナム語交じりの英語で、尋ねたきた。

 彼の目を見て、「Yes…」とうなずくと、

彼は、侮蔑の笑みを浮かべて、

犬でもあしらうように、「シッシ!」っという仕草を見せた。


『永遠の楽園』

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