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8 一般常識

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月3日
  • 読了時間: 4分

8 一般常識


人は、何かが気になり出すと、

それに関連する情報ばかりが、目に付くようになるものだろう。

私は、天使というものと同時に、

沖縄が気になって仕方なくなった。



ゴールデンウィークの初頭、

家でテレビを見ていると、

ニューカレドニアという島について、特集していた。

「天国に一番近い島」

それが、この島のキャッチフレーズだった!

一体何が、

「天国に一番近い」

などという大それたキャッチコピーを呼び起こすかと言えば、

それは、「ビーチの美しさ」だった…!

テレビの映像は、

何か幻想的な加工が、施されていたのかもしれない。

その辺のことは、無知な私には解らなかったけれど、

確かに、確かに、

真っ白い浜と、それを潤す繊細なターコイズ色が、

まぶしいほどに、美しかった。


そのテレビは、観光情報番組だった。

5分ほどもニューカレドニアのお国自慢をした挙句、

「…ココは私たちには敷居が高すぎるので、

 沖縄で代用しちゃいましょうー!」

と言って、沖縄の美しいビーチを、いくつか紹介していた。

いかにも、ゴールデンウィークらしい番組だった(笑)



私は、母親におねだりをした。

「お母さーん!

 ゴールデンウィーク、ニューカレドニアに行きたーい!

 ニューカレドニアじゃなくてもいいから、沖縄に行きたーい!」

「…あんた、単純なコだねぇ…。

 今こうやって、あんたみたいにテレビに影響された人が、

 ゴマンと、沖縄のビーチに押し寄せるのよ?

 ゴールデンウィークなんて、ただでさえ混み合うのに…

 ああいうのはねぇ、

 テレビ撮影のために、

 胸毛ボーボーおじさんたちが居ない時間を作って撮影するから、

 神秘的に見えるのよ。

 実際は、人ごみだらけの海水浴場なんて、ヒドいモンよ。

 天国どころの騒ぎじゃないわ!ゴミの島よ!」

「もぉー!

 お母さん、夢が無さ過ぎ!!」

私は、相談する相手を間違えたと思った。

どうせこの人は、

ゴールデンウィークだろうが県民の日だろうが、

遠出もせずに、家でゴロゴロしているのだ。



私は、

他の用事をキッカケに、沙織に電話した。

女のコたちの電話は、

用件だけで、「じゃ、バイバイ」というワケにはいかない。

私は、恰好の話題として、今朝見たテレビの話をした。

「ねぇ、ニューカレドニアって、知ってるー?」

「あぁ、天国に一番近い島?」

沙織は、ずいぶん冷めた様子でぶっきらぼうに答えた。

「えー!沙織も今朝、テレビ見たのー?

 部活サボったんだぁ?悪い子ぉ。」

「はぁー?

 ちゃーんとフルで出て、ホルン吹いてましたよぉーだ。

 …んで、ゆっこアンタ、

 テレビでやってて、影響受けちゃったってワケ?

 まさかアンタ、

 『ゴールデンウィークに行こうよ!』とか、

 流されやすい日本人の典型みたいなこと、言わないでしょうねぇー?」

「え-!なんで、なんでもかんでもお見通しなの!?」

基本的に沙織は、

私よりもずっと、常識人なのだ。

「ゆっこぉ、ビーチとかはさぁ、

 連休じゃなくて、平日とかに行ったほうが、イイんだよ。

 混み混みだったら、天国どころか、ゴミの島だよー?」

「えー!?

 なんで、お母さんと同じこと言うのー!?」

「いやぁ…多分、誰でも、同じこと言うと思う…。

 ニューカレドニアって、私も別に、詳しくは知らないけど、

 海外で結婚式するときの、定番らしいよ。

 でも、

 ジューン・ブライドにニューカレドニアに行ったって、

 旅行者ばっかりで、ゴミの島になっちゃうんだよ。

 …ゴミって、『人ごみ』のことだかんね?

 だから、花嫁さんたちは、

 一泊5万円もするようなガレージ?…じゃない、コテージ?

 そういうのに泊まって、大金で、風景を買うんだよぉ。」

「えー!そうなんだぁ。沙織、何でも知ってんのねぇ。」

「だからぁ、

 コレくらいだったら、誰でも知ってるってー!

 年がら年中、テレビでおんなじような特集ばっかり、やってるもん。

 ゆっこは少し、

 自分のマイ・ブーム以外の情報にも、

 耳を傾けたほうが、イイかもなぁ。」

「…そうなんだぁ…。

 沙織がそう言うなら、ホントに、そうなんだよ…。」

「もぉー!別に、沙織を基準と思わないほうが、いいよ?

 …ゆっこよりは、基準に近いカモだけど…。

 とにかくさぁ、

 ビーチとか行きたいんなら、

 平日に、学校サボって行っちゃうくらいなほうが、イイんだよ。」

「えー!?親には、何て言うの?」

「えー?

 それは、沙織もわかんないよー。やったことナイもん。

 女子大生とかが、やるんだよ。

 女子大生なんて、授業があったり無かったりするし。

 …でも、

 テキトーなウソついて強行突破して、後でお説教される覚悟くらいは、

 必要なんじゃん?

 彼氏との『お泊り』と、おんなじだよぉー!」

「えー?

 沙織、『お泊り』で親にウソついたこと、あるんだー!?」

「それも、まだナイけどさぁー。

 一般論ってヤツだってばぁ。」


私は、

もう少し、ニュースや新聞にも、目を通そうと思った。

なにしろ、もう高校生なのだ。

大人への階段を、登り始めているのだ。



『星砂の招待状 -True Love-』

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