top of page

9 ヘンな差し入れ

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月3日
  • 読了時間: 5分

9 ヘンな差し入れ


ゴールデンウイークは、家とバイト先の往復だった。

私にとっては、

バイト先も、「天国」とまでは言わなくても「楽園」ではあるので、

それなりに楽しいゴールデンウィークだった。


また、

グループの女のコたちが、入れ替わりで、店まで顔を出してくれた。

みんな、

スポーツ新聞とか女性週刊誌とか、

ヘンな差し入れを、持ってきた…。

きっと沙織が、

「ゆっこは少し、常識知らずだ」みたいなことを、

みんなにつぶやいたんだろうと、思う。


みんなは、ジョーダンのつもりで、

そうした「差し入れ」を持ってきたらしかった。

「すぐ捨ててイイよ」とか、「アンタには教育に悪いよ」とか、言っていた。

私は、その意味さえ、解らなかった。


私は、

それらの「差し入れ」を、捨てもせず、大切に持ち帰った。



家に帰って、ベッドの上で、開いてみた。

ビックリした!

一体全体、スポーツ新聞というものは、

野球1試合のために、見開き2ページも割いているのか!

「トラッキーという着ぐるみが、3回続けてバック転に失敗した」とか、

そんな、およそ試合とは関係のナイことまで、書いてあった。

普通の新聞からは、想像も付かないことだった…!

…まぁ、普通の新聞の野球欄も、

ほとんど読んだコト、無かったけれど…。


私はそのまま、

熱心に、スポーツ新聞を読み続けた。

なんと、野球の話題だけで8ページも費やされていた!

サッカーも、4ページあった。

その後は、ゴルフとか、ボクシングとか、色んなスポーツが続いた。

競馬の記事も、ずいぶんと多かった。

「ボロ儲け!」とか「出し抜け!」とか、およそ新聞らしからぬ言葉が、

紙面のあちこちを踊っていて、あ然としてしまった…。

新聞って、こんなに下品で良いの!?


…そして、

読み進めているうちに、「教育に良くない」のイミも、わかった。

裸の女性が、たくさん載ってるのだ!

私は、女性の性情報(?)がこんなに充実したモノを、

こんなにまじまじと眺めるのは、生まれて初めてのことだった。

ファッション誌にも、少しは載っているけれど、

あんまりまじまじとは、読んでこなかったので。


もちろん、

そのスポーツ新聞に綴られている文字や写真、イラストは、

「性情報」と呼ぶにはあまりにも、下品過ぎた。ドン引きするくらいだった。

けれども、

こうしたドン引き性情報を、何の抵抗も無く読んでいる人たちが、

世の中には、確かに、存在しているのだ。

…それを知るだけでも、

ある意味では、「性情報」と言えるだろう。


官能小説なんてものまで、連載されていた。

…連載だったから、頭もお尻も、切れていた。

恥ずかしい話だけれど、私は、

「えー!続きが読みたい」と、思ってしまった(笑)


これらのページを読んでいる最中、

私は、ドキドキが止まらなかった。

私は、

自分の心の中にも確かに、「セックスへの興味」が潜んでいることを、

痛感させられてしまった。

いつの間にかに、セックスは、

「遠い世界の、遥か大人の人たちのお話」

では、無くなってしまっていた…。



翌日は、

もっと衝撃的な「差し入れ」が、舞い込んだ。

友人の一人であるチアキが、なんと、エロ本を持ってきた!

…いや、あのコは、そういうコなのだ。

私たちのグループの中でも、一番、男のコに免疫がある。

童顔で背が小さいけれど、可愛らしい顔立ちをしているので、

あと3年もすると、ものすごくモテるようになる気がする。

(…実際、そのようになった。)


チアキは、お兄ちゃんが2人いた。

だから、男のコと接することに、抵抗が薄いようだった。

クラスでは、

自分から男のコに話しかけることは少ないけれど、

話しかけられれば、ずいぶん気さくに、自然に、応じていた。

私は、密かに、チアキに憧れていた。


「こんなの、どーしたの!?

 レジに持っていくの、ハズくなかったの!?」

「コレ、

 お兄ちゃんの部屋から、かっぱらってきちゃったのー!キャハ。」

「えー??バレたらどうすんのー??」

「だいじょーぶ♪10冊以上あったから!」

「そういう問題なのー!?」

「そういう問題だよー!どうせ、最新号を買っちゃったら、

 旧いのなんて見なくなっちゃうよー。」

「そうなのー??」

「んー、ワカンナイけど♪キャハ。」



…こんなやり取りをしてるところを、

ATMから戻ってきたトモコさんに、見られてしまった…。

「あらー?

 コレはコレは、たいそうな物をお持ちで…!」

「ご、ごめんなさい…。」

私は当然、顔が真っ赤になってしまった!

「いえ、お姉さん!ゆっこは悪くありません!

 アタシが勝手に持ってきたんです!ゆっこは悪くありません!!」

「ゆっこも『アタシ』ちゃんもぉ、どっちも悪くないよぉ!

 このコはちょいとウブだからねぇ、

 こういうコトを教えられるお友達が居るなら、一安心だわー♪

 『アタシ』ちゃん、ギャルでもないし、不良でもなさそうだしぃ。」

「…あの、

 褒められてるんですか?けなされてるんですか?」

チアキは、目をシロクロさせている。

「んー?どっちかって言えば、褒め言葉ぁ?」

「ならイイけどぉ。キャハ。」

チアキはもう、トモコさんのテンションを掴んだらしい。


トモコさんは、チアキに向き直って言った。

「あなた、カワイイわねぇ。

 そんなカワイイ顔して、セックスに抵抗がナイとくりゃぁ、

 メンズたちから引く手数多でしょう?」

「引く手数多??」

私には、難しい言葉だった。

「モテモテってことよ♪」

トモコさんは、ウインクしながら言った。

チアキは、目を丸くしながら、答えた。

「えー!?

 ゼンゼン、モテるとか恋愛とか、

 まだそういうお年頃じゃぁ、ナイんですよー!!」

「あら?アンタ、自覚してナイのねぇ?

 メンズたちが、

 『オマエはチビだから、コーフンしねぇよ』とか何とか言ってきたら、

 『オマエはチビだけど、オレはロリコンだから、コーフンするよ』

 ってイミなのよー?」

「えー!?そんなこと、ナイナイ!」

トモコさんとチアキは、漫才でもしてるみたいだ。



私は、トモコさんの意見が正しいと思った。

大きな胸以外に性的魅力を感じるなら、

チアキに好意を持つコは、けっこう、多いと思う。

それに、チアキは、

胸だって、この1ヶ月で急に膨らみ始めてきた。

「…まぁ、

 自分の魔性さを自覚してナイくらいのほうが、

 女のコは、カワイイわよ♪

 あなた、大人になっても、

 お化粧やオシャレは、最低限にしといたほうがイイと思うわ。」

「どうしてですかー?」

私が、尋ねた。

「理由は、2つね♪

 1つは、

 ホントの『小悪魔』になっちゃうから。性格が悪くなるってことよぉ。

 もう1つは、

 『モテ過ぎる』から。

 モテるってのはキモチイイもんだけど、

 『モテ過ぎる』のは、色々と、煩わしいモンなのよぉ。」

「…!!

 お姉さん、アタシ、毎日ココに通ってもイイですか!?

 女を磨く、師匠になってもらいたい…!」

チアキは、トモコさんの手を握ってぴょんぴょん跳びはねる。

「あはははは!アンタ、面白いコねぇ。

 ユーモア・センスまであるとなると、

 付き合ったメンズは、ゾッコンになるだろうなぁ!」

私も、そう思う。

「ゆっこちゃーん?

 アナタ、イイお友だちが居て、良かったじゃなーい♪」



『星砂の招待状 -True Love-』

bottom of page