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エピソード117 『天空の城』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年7月22日
  • 読了時間: 3分

エピソード117


やがて浜辺に、打ち上げられたボロ船が1つあるのを見つけた。そして人の姿がある。

廃船を使って子供たちが遊んでいるのだった。れいは近寄ってみる。

男「島が見えたぞー!皆の者、上陸の準備だ!」

男「船長!奴ら、槍を持って襲ってきます!」

男「なにーぃ、砲弾の準備だ!」

れいはそのやりとりを見て察した。子供たちは海賊ごっこをしているのだ。れいは海賊というものを、本の中で読んだことがある。


れいはだんだんとそこに近づいていった。

すると男の子の1人がれいに気づく。

男「船長!女です!女が歯向かってきました!」

れ「えぇ!?」

男「なにーぃ、砲弾を撃てぇ!」と言うと、船長役らしき男の子は、泥団子を丸めてれいに投げつけてきた。

れ「きゃぁ」れいは素早く身をかわした。

れいは《破邪の剣》を《ホイポイ》で消し、両手を上げ、「歯向かってはいないわ」と説得した。

男「問答無用!撃てーぇ!」男の子たちはそれでも、れいに泥団子を投げつけてくるのだった。


れいはそれ以上近づくのはやめた。

町の男たちと同じように、少し荒く、付き合いづらい子たちなのだろうと思った。

もう町に戻ろう、と振り返る。

波打ち際からも遠ざかる。

すると、町のほうから中年の女性がこちらに歩いて来ていた。どれかの息子を迎えに来た母親だろう。

母「こら!泥団子を投げるんじゃないよ!」

そしてれいに向かって、「ごめんなさいね」と頭を下げた。

「いえいえ」とれいは苦笑いをした。

母「海賊ごっこはやめろって言ったって、聞きゃしないんだ」

れ「海辺の子たちは皆、海賊に憧れるんではないですか」れいは本で読んだ知識をもとに、答えた。

母「やめてほしいんだよ、海賊に憧れるのは」

れ「え、どうしてですか?」

母「乱暴な子になるからさ」

れ「冒険好きな子になるんじゃないのですか?」れいの知識では、そうだと思っていた。

母「いいや、海賊に憧れる子は乱暴な男になるよ。大抵ね。

 今の見ただろ?

 やめろって言ったって泥団子投げつけるんだ。侵略とか攻撃とか、そういうのが悪いもんだって思わないんだよ。格好いいって思ってやがる。それが母親としては心配でたまらんさ」

れ「はぁ」

母「父親たちは怒らないんだよ。

 だからあの父親たちみたいな大人になる。

 でっかいマグロと格闘して、英雄気取りさ」

血の匂いが、好きだったりするんだろうか。

母「船に乗って冒険に出たいのか?それならそれでいいさ。

 でも侵略なんかしないどくれ。そう思っちまうよ。母親としてはね」


母「・・・ところで、最近は女の一人旅ってのが流行ってんのかい?

 あんたも海辺にテント張って寝泊まりするのかい?」

れ「え!?」

母「なんだ違う派閥か。

 最近っつっても何年も前だがね。

 女の子が一人旅だっつってこの町に来たよ。

 カネが無いんだっていって宿にも泊まれないようでね。海辺に来て、銛(モリ)を拾って、それで魚獲って食いしのいでたさ。何度も何度も、海に向かって銛を投げるんだよ。テント張って、何日かここに居たんだ。そりゃ印象にも残るよ。

 外国の女ってのはたくましいもんだね」

色々な旅人がいるもんだな。れいも感心してしまった。

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