エピソード119『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』
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- 2024年5月2日
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エピソード119
天使の里からも修道院からも、遠く離れた。
貿易道を道なりに進んでいくと、やがて大きな街が見えてきた。
しかしその時だ!
?「もしもーし!もしもーし!
そちらはアミンとかいうドワーフか??」
ア「なんだ!?」
平原の中で馬車を運転するアミンの耳に、奇妙な声が聞こえた。
ゆ「どうしたの!?」
ア「何か今しゃべった!?」
?「わしじゃよわし。マヤじゃ」
ア「マヤ!?」
キ「霊聴で何かをキャッチしてるんだわ」
ゆ「マヤって、洞窟の底に居たお爺さん?」
な「プチアーノンが大好きな人だぁ!」
マ「くだらないハナシをしている場合じゃないんじゃよ!」
ア「アンタが言うかいっ!(汗)」
マ「天使の里の天使たちがピンチなんじゃ!
すぐに戻ってくれ!!彼女たちを救えるのはおぬしらしかおらん!!」
ア「えぇ!天使の里が!?
本当なの!?もうずいぶん離れちゃったよ!」
マ「本当じゃが、どうやって証明しよう?信じてもらうしかないのじゃが!」
3人はキキの顔を見た。
キ「戻りましょう!」
アミンは全速力で馬車を走らせた!馬は夜も眠らずに走り続け、アミンは夜も眠らずに手綱を握り続けた!
翌日の昼下がり、馬車は天使の里に到着した。
キャー!!誰かの悲鳴が聞こえる。
山「ぐへへへへ!噂通りじゃねぇか。こんなところに本当に里があるとはな。
しかも美人ばかり。こいつは高く売れるぜ!」
なんと、少女たちの幾人かが山賊の二人組に捕えられている!そして残りの住民は怯えて硬直している。
ア「このやろー!!」アミンは山賊に殴りかかっていった!
山賊は驚き、少女たちを捕えていた縄を手放してしまった!
ななたちは少女の介抱に走る。
山「なんだおめぇ!!」
ア「名乗る義理もない!」アミンはなおもオノで殴りかかる。山賊は大きな剣で抗戦する。
ア「人間だ!どうやって成敗すれば!?」
アミンは戸惑った。殺してしまってよいのか?本気で斬りつけるわけにもいかない。
しかし抗戦が長引けば里が荒れる。
アミンが手加減をすると、山賊がだんだん押しはじめた!
状況を察し、ミカエルが叫んだ。
ミ「殺してしまってかまいません!情けを掛けると不幸を繰り返します!」
アミンはそれを聞き取った。しかしなお戸惑っている。
天使たちの前で派手な流血の戦闘をしてよいのか!?それを防ぐために彼女たちは身を潜めてきたはずだ。
するとキキが動いた!
山賊の前に勇ましく立ちはだかる。そして誰よりも冷徹な表情に変わった。
キ「戦闘を楽しんでいる余裕はないの。
申し訳ないけど、さようなら。
《ザラキ》!!」
死の言霊が山賊たちに襲いかかる!なんと、山賊たちはあっさりと息の根が止まった!
キ「即死の呪文よ。もう呼吸すらしないわ」
暴れていた山賊たちは、微動だにしないのだった。
キ「弔いまでわたしたちが担いましょう。
弔いという言葉が適しているの?わからないけど、死体は燃やして跡形なく埋めます」
キキは毅然として言った。普段のアイドルのような仕草が嘘のようだ。
ゆ「わ、私たちが山賊を呼び寄せてしまったんだわ・・・!」
ミ「おそらくそうです。あなた方の馬車が人里を離れていくのを、目撃した者がいたのでしょう」
な「ごめんなさい!ごめんなさい!」ななは悲しみ溢れて泣き出した。
天使は誰もさらわれていない。大きな傷を負ってもいない。しかしななは悲しくて仕方がなかった。
ミ「いいえ、怒ってはいません。
民の中には憎しみを抱いたものもいるかもしれませんが、私が言って聞かせます。
この里の総意としては、決してあなた方を憎みませんし、怒りもしません」
ゆ「どうして!?」
ミ「仕方のないことなのです。ほんの時々は。
人が生きるにおいて、事故を0にすることは出来ません。誰がどれだけ頑張ろうとも。
あなた方は悪いことをしたわけではない。
修道院のシスターも悪いことをしたわけではない。誰も責めません」
ゆ「しかし・・・」
ミ「それに、戦うあなたたちを見て、少女たちは思ったでしょう。
『美しいだけでなく、強い女にならなければ!』と。
脳天を突き抜けるようなこうした体験が、人生の中で少しは必要なのです。
ゆ「ありがとう・・・ございます・・・」
ミ「いいえ。こちらこそありがとうございます。
こうした事件の引き金が他でもなくあなたたちで、本当に良かった。
おそらくですが、民の中であなた方に恨みを抱く者はいないでしょう。
心優しい人の失態を、人は責めないものです」
ア「それにしても、殺して良かったんだろうか・・・」
ミ「良いのです。
それは状況によりけりですが、この件においては命を奪って正解です。
ここでの死なら外界には証拠も残りませんし。
情けを掛けて放すと、まず間違いなく同じことがまた起きます。悪人とはそういう生き物です。
罪なき民を守るには?襲ってきた者を殺すことも、時には必要です」
ミカエルが「殺すしかなかった」とためらいなく言いきることで、アミンたちは安堵をするのだった。
ミ「そしてキキさん、どうもありがとうございます。
流血も戦闘も見せずにこの事件を解決してくださって、ありがとうございます。
その技を持つものも、その配慮が瞬時に利くものも、この世界にほとんど居はしなかったでしょう」
キ「えへへ♡」
キキはもういつもの無邪気な笑顔を取り戻した。
ミ「おかげで、人だけでなく里も、ほとんど傷を負わずに済みました」
里の花畑もまた、キキのように可愛らしく微笑んでいた。
ななは、もし自分がいつかこの里に逃げ込んでくることがあったなら、里のために役に立てる役割があるかもしれないと思った。ななは少しなら、防戦のために拳を握れる。
一行は再び、東へ向かって馬車を駆った。
キ「さぁ、悲しいことは忘れましょう♪」
そう笑うと、軽やかにフルートを吹くのだった。
キ「ドレミ―レドっドレミレドレー♪」
な「それはお腹がすくからダメぇ!!(汗)」
あははははははは!
一行はつられて歌い、笑い、踊る。心の中の悲しみは、いつの間に消えてしまうのだった。