エピソード120 『天空の城』
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- 2024年7月21日
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エピソード120
ぐるっと一回りすると市場を出て、武器屋を探した。
良い武器が買えるかもしれないし、情報が手に入りやすそうな気がする。
武器屋は大きな通りの端に、古びたものが一軒あった。
れ「こんにちは」
武「よう!ここは武器の店だ。どんな用だね」
れ「買うかはわかりませんが、品物を見せてください。
ここは芸術に溢れて、良い国ですね」
武「良い国なもんかい。民も城もすっかり平和ボケしちまってさ。
お陰で武器がさっぱり売れねぇぜ。
いやいやオレだけの問題じゃないんだよ。
どうするつもりなのかなこの国は。
れ「どうするって、何か問題なのですか?」
武「城の神官様がお告げを聞いたんだ。
新世紀の訪れとともに、大きな災厄が国を襲うだろうって。
戦争か、または魔王が侵略してくるか、どっちかだろうな。
いずれにせよ戦うチカラが必要だろうよ」
れ「そんなお告げがあるのですか!」
武「サマリントは曲がりなりにも、古の勇者様の血を継いだ国だってのにさ。
ハーゴンて魔王が悪さした時代に、サマルトリアって名前だった当時の王子様が魔王をやっつけたんだぜ。格好いいもんだよ。剣も魔法も操るスマートな王子だった。
オレは国の行く末が心配で仕方ないね。芸術なんかやってる場合じゃねぇってんだ」
やはり色んな意見がある。
れ「神官様というのはお城にいるんですか?」
武「城の中に神殿があるよ。
うちの城は余所者が入れるんだっけかな?
王は旅人の謁見とかしない主義だった気がするぜ」
れ「そうですか。どうもありがとう」
れいは城に行ってみることにした。
城下町の奥に城はある。城もまた目を見張るもので、真っ白な、ツルツルな質感を持った風変わりな建物であった。教会のような尖塔を持つ。
前庭は広いが何もない。白い大理石が敷き詰められているだけだ。庭というより集会場のようなものか、昔はそういう使われ方をしていたか。
今になって気づいたが、この国は空色と芸術で彩られて美しい代わりに、緑がない。植物が極端に少ないのである。周辺の土地全体の気候の問題なのだろう。緑もあったらもっと美しいのに、とれいは思った。
前庭までは立ち入りが可能だったが、その先には兵士がいた。
「王様にご挨拶がしたい」と言うと、やはり「それは受け付けない」と止められてしまった。「では神官様にお会いしたい」と言うと、「それも無理だ」と言われるのだった。
閉じられた国、か。秘密主義なのだろうか。
王や神官に近い知識を持った人に話は聞けないだろうか?そう考えて、教会を思いついた。
教会を探してみよう。サマリントは教会も少し変わっている。城を小さくしたような建物で、やはり白くてツルツルしている。
れいが教会に入ったころ、大勢の町民が出口へ向かうところだった。丁度礼拝か何かが終わったところだったのだろう。静かな礼拝者が大勢いるようだった。
人波が引いてから神父を探す。