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エピソード121 『天空の城』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年7月21日
  • 読了時間: 4分

エピソード121 『天空の城』

エピソード121


れ「旅の者ですが、お話を伺うことは出来ますか?」

神「これはこれは。信心深い方ですね」

れ「城に・・・あ!神様の像がない」

れいは、「城に入れてもらえなかったので教会に来た」という経緯から話そうと思ったのだが、神父に話しかけた瞬間、もう1つこの教会の特異な点に気づいたのだった。メシア像も、聖母像も祀っていない。赤い髪のルビス像もない。

神「ははは。ゆっくりお話を伺いますよ。

 そうですね。この国の教会には像がありません。

 私たちの国は、偶像崇拝を禁止しています。

 教会に像を置くと、どうしても民はその像に・・・その人物にすがってしまうのです。

 しかし宗教とは『神様助けて!』とすがるためのものではありません。本来は。

 どう生きれば良いのかを、神に教わる道徳の場です。今は神父がその教育を肩代わりしますがね。

 系統としては、精霊ルビスを信仰しています」

れ「そういう教会もあるのですね。

 水色の国なのに、赤い髪の女神を信仰するとは面白い気がします」

神「赤い髪?あぁ、そうか。

 精霊ルビスを赤い髪の女神だと認識する国が多いようですね。

 私たちの国の伝承では、精霊ルビスはあくまで精霊です」

れ「せいれい?」

神「えぇ。『精霊』という言葉もまた色々な捉え方があるのでしょうが・・・

 私たちにとって精霊ルビスは、人の形をした存在ではなく、霊魂です。

 人魂とでもいうのでしょうかね。

 民の前に姿を現して啓示をしたこともありました。

 しかし、大きな光の姿をしています。男でも女でも、姫でも下賤でもないのです」

れ「なぜ赤い髪の女神として現れないのですか?」

神「なぜでしょうね。

 この国の信仰と関連していると思われます。

 この国は古くから偶像崇拝を嫌いますから、偶像にされかねない人型の姿を、ルビスは見せなかったのかもしれません。

 しかしルビスが光の姿で啓示したがゆえに、この国は偶像崇拝をしなかったのかもしれませんが・・・。どちらが先だったのかは、定かではありません。

  古の勇者にも、精霊ルビスの声を聞いた者が居るようです。その場合も、ただ声を聞いただけで女神の姿など見なかった、という伝承があります。

 神たちは、姿を見せずに語り掛けることもあるようです」

れ「へぇ!」これは覚えておいたほうが良いのではなかろうか。


神「ところで、こんな話をしに来たのではないのではないですか?」

れ「あ、そうか。

 今、お城に向かったのですが入れてはもらえませんでした。王様か神官様とお話がしてみかったのですが。でも、今みたいなお話が聞きたかったのです」

神「母親は、夕飯の買い物をする際に子供の意見は聞きません。

 なぜか?

 子供の意見を聞き入れると、食卓がクッキーとチョコレートばかりになってしまうからです。

 どのような食事が健康的か、親のほうがよくわかっていますから、子供の意見は聞きません」

れ「子供にチョコレートはあげないのですか?」

神「いいえそうではないのです。普段の生活を見ていれば、子供たちがチョコレートを欲しがることはわかります。チョコをまぶしたクッキーが流行りなのだということもわかります。

 母親はそれを踏まえたうえで、子供の健康を害さない程度に、お菓子を買い、食卓に少し添えます。

れ「城に無暗に人を入れないが、王が独裁しているわけではない、ということでしょうか?」

神「そうです。民主主義という考え方は大切ですが、やり方を熟慮しなければなりません。

  チョコレートをせがむばかりの子たちなら、多数決をとることは危険です」

れ「そうか・・・

  チョコレートをせがむばかりの民なら、多数決はとらないほうが良い気がします!」

神「この政治が最も正しいのかは定かではありません。

 しかしこの国は、それでおおむね平和に回っている、と言えるでしょう。そして、他の国よりも平和で上品なのだと思われます。

 快楽や自由や金儲けを、民に許しすぎるのは良くないのだと、思われます」


れ「この国の美意識は素敵です!どうしてこんなに空色と芸術に溢れているのですか?」

神「サマリントは、『天国と繋がっている国』と言われてきました。

 空の上には天国があるのです。

 民がそれを忘れないように、この国は家の壁を空色に塗ることにしました。

 もし、仮に王がエゴな独裁に陥っても、街中の壁が空色だったら、民は『この国は天国だ』ということを忘れないでしょう。空の上のような穏やかな街を、保ち続けようとするでしょう。そう希望を込めて、空色に塗り続けています」


れいはこの空色の町に、何をするでもなく数日間滞在した。

街を散策しては戦闘訓練に出て、戦闘訓練にくたびれたら街を散策する。同じ様な日々を数日過ごした。

その中でれいは、《イオラ》の魔法を会得した。

《イオラ》は《イオ》系の中級呪文である。《ヒャダルコ》や《ベギラマ》と、ランクとしては同等だが、それらよりも敵に与えるダメージが大きい。

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