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エピソード134 『天空の城』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年7月22日
  • 読了時間: 3分

更新日:8月16日

エピソード134


マイラの村はラダトームから東にあるという。

森がちな地形を進み、なだらかに高度を上げ、橋を一つ越えると、目当ての村はあった。


奇妙な臭いがする。何か事件が起きているのか!?

れ「大丈夫ですか!」と村人に尋ねると、誰も呑気な顔をしている。

奇妙な臭いの正体は、温泉の硫黄であった。

マイラの村も温泉が名物なのだった。ラオの村はこんな匂いはしなかったが、温泉の泉質によって、臭いを放つこともあるそうだ。

浸かると体が臭くなってしまいそうだが・・・皆は気にしないのだろうか?率直に尋ねてみると、温泉の健康効果や気持ちよさを好む人たちは、臭くても気にしないのだそうだ。まぁ、この村に住んでいたり長期滞在している者にとって、周囲もみんな硫黄臭いなら、自分が臭っても気にならないだろう。

余所者にとっては、どう立ち回るべきかためらわれるのだった。れいは温泉が好きだが、臭い温泉はどうしたものか・・・。今回は用事のついでに立ち寄っただけなので、温泉は入らないことにした。



さて、目的を果たさなければ。

れ「この辺に一人で住んでいるという、変わり者のお爺さんは知りませんか?」と道具屋や宿屋に尋ねてみるが、「知らない」と言う。

マイラには老人が多く、一人暮らしする者も少数居るようだ。しかし「変わり者」だとか、他の街から尋ね人が来るだとかいう老人は思い当たらないと言う。

そう。この村は老人が多い。古い村なのだろう。

老人のことは老人が知っているかな、と思い、結局は温泉の湯気が立つほうへ近づいていくことになった。

この村の温泉は、旅行者にも提供されているが住民たちも利用している。足湯だけでなく露天風呂も、井戸端会議の場として活用されているようだった。


れ「この辺に一人で住んでいるという、変わり者のお爺さんは知りませんか?」

同じセリフを、8度目か9度目に発したときだったろうか。温泉に遊びに来ていた老婆が反応を示した。

婆「村の中じゃなくて、近くに住んでいる人かしらね?」

れ「あぁ、そうかもしれないです!マイラの近くの祠とか言ってたような・・・」

婆「えぇえぇ。変な人じゃなくて素敵な人でしょう?」

れ「え?どうでしょう」

婆「みんなにとっては変な人かしらね。私にとっては素敵な人なのよ。

 ブライさんのことでしょう」

れ「どういうことですか?」

老婆は、かん高い声で語り始めた。

婆「昔ね、この村が温泉を理解しはじめた頃・・・

 彼は、『村のみんなの家に温泉を引いて、みんなで楽しもう』と言ったの。

 でもね、当時の村長さんは、『施設を作って観光商売をすべきだ』って言ったの。

 他の人たちも大抵は、村長の味方に付いてしまったわ。

 ブライさんは独りぼっちになってしまって、それで村を出ていってしまったのよ。

 それからは、その祠に一人で暮らしているわ」

れ「そうだったんですか・・・」


婆「祠は、少し北に行ったところにありますよ。森の中にひっそりと。

 祠って何なんでしょね?昔からあそこにあったんです」

れ「どうもありがとうございます。あとは自分で探してみます」

婆「あなた、ブライさんのところに行くの?」

れ「はい、そのつもりなのですが」

婆「ねぇ、私も連れていってくださらない?」

れ「えぇ、お婆さんが!?」

カーラお婆さん 『天空の城』
カーラお婆さん キャラデザby絵夢さん

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