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エピソード137『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』

エピソード137


ヒョォォォォォーー!!

洞窟を抜けた先は地上・・・と想像していたが、なんと出た先は山の上であった。

世界樹の大地と外界とを隔てる山は大きく、洞窟は山の山腹に繋がっていただけなのだ。

4人「うわぁーーーーー!!」

そこからの眺めは、絶景以外の何物でもなかった!

ななは得も言われぬ感動を覚えた。山登りに慣れているわけでもないななは、こんな素晴らしい景色を見たのは初めてなのだ。

いいや、初めてではない気がしたからだ!

この既視感は何だろう?と不思議に思ったが、すぐにその答えが浮かんだ。

カフェ『水平線』に新しく飾られた、あの大きなタペストリーである!あのタペストリーの絶景と瓜二つのような気がした。

絶景を見下ろしていたのはか弱い少女であったが・・・まるでそれに自分が重なるのであった。


山は、魔物が出現しうる場所である。

しかしその周辺には魔物の気配がないことに安心すると、一行はまずキャンプを張って休息をした。当然だ。

早く山を下りたいが、気を焦るよりもしっかり栄養と休養と補給し、頭もクリアに戻したほうが良い。


そういえば・・・

絶景の美しさに感動して失念していたが、目当ての世界樹とやらは見えないようだ。

まさかここまで来て「ここではない」ということはないだろうなと不安になるが、視界の先はまだ地平線が広がる。うんざりするが、さらに歩けばその先に世界樹がそびえている可能性は、残されている。もう、そうであると願うしかない。そのことに疑念を挟んで悩むだけの気力は、一行にはなかった。

人は時に、何かを能天気に信じ込むしかないことがある。


長い休息を挟み、ゆっくりゆっくりと山を下っていった。

風は絶え間なく吹き抜け、かいた汗を乾かしていく。どれだけの汗をかいたのか、もう誰にもわからない。

どれだけの涙を流したか、もう、誰も覚えてはいなかった。世の中には、古文書にもアカシックレコードにも記されていない真実があるのだ。

・・・キキだけは一人、未だ元気にぴょんぴょんと山道を跳ねていたが・・・。



山を下れば集落の1つでもあるかと期待したが、そんなものはなかった。

大抵、草原だろうが砂漠だろうが、それなりの距離ごとに里があり、休息と補給が叶った。しかし、世界樹の大地にそんなものはなかった。そうだろう。人の往来などほとんどない地だ。


馬車の中には少々の食料が残っていて、幸いした。

多くはないし、いつまた補給が叶うかもわからないので、慎重に消費する必要があった。


平地に至ると、始めは平原だったがだんだんと砂漠がちになってきた。

世界樹は砂漠の真ん中にある、と誰かが言っていなかったか?

近付いてきたのだろう。

そして砂漠のあちこちに、飛行艇の残骸を見かけるのだった。世界樹を求めて、科学力と財産でもって空を飛んだ者たちは、無残にも散り散りになったケースも少なくないのだ。想像すると身震いするので、想像などしない。


やがて、本当に大きな樹が見えてきた!

数百メートルはあろうかという巨木である。世界樹とは、本当にあったのだ。


「世界樹を目指しなさい」

洞窟の老人に言われたときには、こんな途方もない道のりになるとは予想だにしなかった。

こんなに難解だとどこかのガイドブックで読んでいたなら、きっと早々に断念していただろう。

知らないほうが良いこともある。

知らないから辿り着ける場所もある。

いや、ここまで来たのが良いことだったのかは定かではないが、世界樹なる秘境に赴くにあたって、ロクに何も知らないままのほうが、良かったのだろう。

旅の目的は遂に果たされるのだろうか?

一行は高鳴る胸を抑えながら、その大きな樹へと近づいていった。


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