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エピソード143『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』

エピソード143


爆発は何だったのか?

気持ちは焦るが、住居の中で馬車を全速疾走させるわけにもいかない。

「勇者様、がんばれー!」「大道芸人様、がんばれー!」という住民たちのエールに応えながら、一行は落ち着いて空を目指した。


新しい階に達するごとに、長らしき人がそばに着いて道案内をしてくれた。

すると一行は安心し、住民たちも安心した。

一行は巨大な「木のおうち」の探索を楽しむ余裕も少しはあった。ななは特にそれが楽しかった。まるでおとぎ話の中である。

花や葉、ツタ、枝・・・様々なものを用いて住居は彩られていた。とてもウッディな、ナチュラルな、サグラダファミリアのようであった。ゆなは特にうっとりした。

世界樹の樹の中では、他の植物が育てられていたりもする。まことに奇妙な光景だ。

樹の中で野菜も作り、鶏だって飼われている。

どうやら学校もあるし、店のようなものや教会のような場所もある。

樹の中に暮らしがすっぽり収まっている。

樹には適度に窓が設けられており、閉塞感を防いでいるし外の風景も見られる。まぁ生い茂る自分の葉が見えるばかりだが。

しかし、四角い窓から見える緑のモザイクは、ただそれだけで美しいのだった。世界樹の葉は日の光を透かして、とても綺麗に揺らめいている。窓枠から見える風景は、本当に、前衛芸術という感じだ。

な「世界樹さん、元気そうに見えるね」とななは言った。葉の美しさはまるで5月の少年のようなみずみずしさだ。

お付きの長が言った。

長「世界樹はそのチカラを失ったと聞いたのでしょう。

 たしかに、《せかいじゅのしずく》や《せかいじゅの葉》などは、本来の効力を失っています。

 しかし、樹の幹自体は元気を失ってはいません。葉も青々と茂っています。

ゆ「そうなの!?」

長「はい。どういう仕組みかはわかりませんが・・・」

ア「じゃぁ、シルヴァヌスたちの暮らしは安泰?」

長「そう考えています。この樹が物理的に破壊されないかぎりは・・・」

その階が終わると「では、気を付けて」と長は一行を見送った。

そして餞別の品をひっそりと添えてくれたりするのだった。


階層は20階を越えたであろう。

まさかこんなところで奇妙な登山をするとは思わなかったが、まるで登山のような道程となった。

キキは馬車馬の頭を撫でながら言った。

キ「それにしてもあなた、よくこんなところまで着いてきてくれたものよね! 

 不満の1つも言わずにさ。とてもいい子だわ♡

 この旅がいつか終わったら、あなたわたしのペットになる?」

馬「ぶるるん!」馬は何やら威勢よく返事をしたらしかった。

本当に長い間、旅に着いてきてくれたものだ。


20階を過ぎ、気力としては疲れるが、体はあまり疲れを感じていなかった。

「世界樹で造られた家や家具は癒しのチカラが高い」と宿屋が言っていたっけ。

上階には老人が多いようだった。シルヴァヌスとて、老人たちはあまり動かないのだ。

しかしそれゆえに、てっぺんでの爆発は心配になる。

やがて一行は、世界樹の屋上へと出た!


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