エピソード146 『天空の城』
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- 2024年7月22日
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第5章 世界の深淵へ
エピソード146
れいはラダトームの一件において、誰にも感謝されず何の報酬も得なかったが、あの寄り道をしたことで損したとは思っていなかった。無意味だったとも思っていない。
ラダトーム地方を彷徨い、竜王を討伐したことで、自分はかなり強くなったという実感がある。ここでも様々な人に会い様々な話を聞けたし、強力な武器も買えた。そもそも効率の良いゴールド稼ぎにもなった。
いいやそもそも、旅人に効率だとか成果だとかいう概念はないのだ。1ゴールドすら得ることがなくたって、ある町に辿り着きそこで過ごした時間が、宝物である。いつもそう感じている。
そう、旅人にとって、宝箱はダンジョンに落ちているものではない。宝箱は、町の中にも宿屋のリビングにも、どこにでも落ちている。旅人は、無数の宝箱を拾いながら旅をしている。ただその宝箱の外観が、宝箱ぜんとしていないというだけのことなのだ。それに気づくと、旅はなおさら面白い。毎日いくつも宝箱を拾い続けるのだから!
同じことを書く。
旅人にとって、宝箱はダンジョンに落ちているものではない。宝箱は、町の中にも宿屋のリビングにも、どこにでも落ちている。旅人は、無数の宝箱を拾いながら旅をしている。ただその宝箱の外観が、宝箱ぜんとしていないというだけのことなのだ。それに気づくと、旅はなおさら面白い。毎日いくつも宝箱を拾い続けるのだから!
東へと進んでいくと、大地はまた砂漠がちになった。
日差しや渇きから守ってくれる植物が少ないので、また慎重にならなければ。
次に訪れた町はエンゴウだった。
ガタイの良い男が多く、力仕事の道具が町の片隅に多く転がっている。ここも炭鉱夫の町か?すぐ近くに山は見えないのだが・・・町の人に尋ねてみると、やはり炭坑で栄えてきた町とのことだった。
それにしても炭鉱夫のような男の姿が多いが・・・大勢の男たちが、昼間から食堂で酒を飲んだり、井戸端会議してばかりいる。
れいは次の町に着いたら行うことを決めていた。それは防具屋に行くことだ。盾を新調したかった。
竜王と戦ったとき、《はがねの盾》は奴の魔法攻撃で溶けるような劣化を見せた。奴の放った《ドルモーア》とかいう魔法は、他の魔物や人が放つのを見たことがない。とても珍しいもので、それを食らうことはそう頻繁にはないのだろうが、とにかく劣化した盾を使い続けるべきではないし、魔法や炎のダメージを軽減してくれるようなものがあるなら、そういうものにグレードアップしたい。
エンゴウは大都市ではないが、周囲の魔物は強いし、炭鉱夫の土地では強力な武具が多く出回っている印象がある。期待は持てる。
これまで貯めた宝石をまずは換金し、そして防具屋を覗く。
防「これは他所からきた冒険者だね。どんな御用かね?」
れ「新しい盾が欲しいのです。ちょっと強力なものが。魔法や炎のダメージを少し軽減できるようなものが、あったりはしませんか?」
防「うーん。簡単なようで難しい注文なんだよなぁ。
盾は特殊効果の付いたものが多いんだが・・・よほどの高級品でないかぎり、『魔法への耐性』か『炎や吹雪への耐性』かどっちかなんだよ。どっちか選んでもらわなきゃな」
れ「それは悩ましいですね」
防「炎や吹雪への耐性を持つもののほうが良いんではないかとは思うけどな。
それだとこの辺がオススメだ。《ドラゴンシールド》。格好いいだろ?大きさも重さも手ごろで、戦士たちがよく使ってるよ。
れ「うっ!」格好いいと言えば格好いいのだが、今さっき竜王と死闘を繰り広げてきたれいにとって、ドラゴンの顔のモチーフが派手に施されたこの盾は、ちょっと『顔も見たくない』感じである・・・。
れ「も、もう1つのほうは?」
防「魔法耐性の高い盾と言えば、まぁこの辺だな。《魔法の盾》だよ。こっちは騎士っぽい格好良さがあるな!」
れ「そうですね。こっちが良いです」
防「よし決まりだ!4,000ゴールドだね」
れいは《魔法の盾》を装備させてもらった。うん。立派な戦士らしくもあるし、スタイリッシュな騎士のようでもある。
防「そういやさ、冒険者ってことは、炭坑組合に入ってるわけないよな?」
れ「え?組合?」
防「それならさ、ちょっと町長のところに行って悩みを聞いてやってくれよ」
れ「あ、はぁ」
この町でも何か、やることが見つかりそうな気配だ。