エピソード147
れいはエンゴウの町の町長の家を探す。
防具屋の言うとおり、町の片隅に大きな家があった。
トントン。
れ「町長さん、いらっしゃいますか?」
町「おぉ、誰だろうか」町長は家の中で孫のおもりなどしているのだった。
町長はれいを客間に通し、お茶を出す。
れ「炭坑の何かで、町が困っているとお聞きしました。
何かお助け出来ることがあるかもしれません」
町「本当か!それはありがたい。
もし可能ならば、炭坑に少々鉄鉱石を採りに行ってもらいたいんだがな」
れ「何に使うものなんですか?」
町「家だのなんだの、色々なものの材料として使いたいのだがね。そういうのは後回しだ。
村の伝統行事、ほむら祭りで使っている台座を、そろそろ新調したいのだよ。それは早急に材料を仕入れたくてね」
れ「はぁ。ツルハシとかいうのを貸して頂ければ、採ってこれると思います。
炭坑には魔物が出るのですか?」
町「いや、炭坑の中に出てくることはまずない。道中は魔物に遭遇するがね」それは普通のことだな。
特に炭坑の奥で手強い魔物が待ち受けているというような話ではないようだ。難しくないだろう。れいは引き受けることにした。
とりあえず今日は、新しい町をのんびり視察だ。町長は「今日明日を急ぐものではない」と言っていた。
どこの町にせよ歩き回るのは楽しい。町長の家を探しがてら少しは様子を眺めたが、用事が済んだスッキリした心で改めて町を眺めるのだ。
炭坑道具に加えて、荷馬車や手押し車があちこちの軒先に置かれているのをよく見かける。炭鉱夫の家が多いのだろうが、それにしても荷馬車などの数が多すぎないか?なんだか少し違和感がある。
庶民的な食堂が多く、庶民的なグレードのものを扱う商店が多い。落ち着いた町だ。
町の真ん中で大きな建物を見つけた。おぉ、これが炭坑組合所というやつか。さっき防具屋が話していた。その建物の前には立派な馬車が停まっていた。近隣からお貴族さんでも来ているのだろうか。
夕暮れになるともう、食堂はビール片手の男たちで賑わっていた。夕飯にはちょっと早い気がするし、人口密度が高すぎる気がする。うーん何だか違和感がある。ちょっと鬱陶しいので、れいは町のはずれの静かな食堂を探して食べた。
すっかり暗くなった町を宿へと戻る。
六等星の小さな小さなスポットライトを浴びて、この町でも吟遊詩人が歌っている。
吟「ルルル~ルリラ~
ルルルル~ルリラ~♪」
この町の人ではなさそうに見える。
れ「あなたもさすらっているのですか?」
吟「あなたもお一人ですね。
仲間選びは慎重であるべきです。
これだ!と思える仲間がいないので、私は一人で歌っています」
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