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エピソード150 『天空の城』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年7月22日
  • 読了時間: 2分

エピソード150


れいはその日の夕方、普段の夕食よりも早めに町の食堂に出た。

炭鉱夫たちで賑わう1つの店に入る。知らない男たちのテーブルに相席で、ギュウギュウになりながらも、彼らと同じものを食べた。

ガラは良くないし、大酒呑みだし、足は臭い。

しかし、憎めない人たちなのだなと思った。


「よう嬢ちゃん!」と赤い顔で絡まれても、れいは笑顔で答えた。「お仕事お疲れ様です」と。

男「いやいや今日は働いてねぇんだよ!はっはっは!」

れ「それでも、いつもお疲れ様です」れいは精いっぱい微笑んだ。

れいは、これまでに感じたことのない感情を抱いていた。どういう言葉で形容すればよいかはわからない。そして、これまでに発したことのない愛想をした。

自分の心が少し、温かくなったのを感じた。

れいは、この町で少し強くなった。そしてれいの世界は少し広がった。

れいはこの町では戦いなどしなかったのに、少し強くなった。れいの世界は広がった。男ばかりの食堂の中に、入っていけるようになった。

れいは、心の中でそこにいる男たちに《ホイミ》とささやいた。



今日も町には吟遊詩人が、夜空を見上げて歌っていた。

吟「おぉルシカ~

 あなたが悲しんでいるとぉ~ みんなも悲しくなってしまいます~

 おぉ青い翼の小鳥たち~

 あなたが悲しんでいるとぉ~ みんなも悲しくなってしまいます~」


ガラは良くないし、大酒呑みだし、足は臭い。けれども平和に懸命に生きている民、か。

手を出してはいけない戦いも、あるらしい。


エンゴウでは向こう1か月ほど、なぜか水虫の薬が売れなかったらしい。

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