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エピソード161 『天空の城』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年7月22日
  • 読了時間: 3分

エピソード161


れいは再び歩きだす。

日差しが強く感じるのは、遮るものがないだけでなく、海や砂浜が光を反射するからか。マローニみたいに帽子が欲しいな。そして風とおしの良いワンピースが。


やがて村は途切れ、ヤシの木と海に挟まれて歩き続けていると、奇妙なものを見つけた。

打ち上げられた廃船だ!それだけならトロデーンで見たことがあるが、あのときに見たものよりもずっと大きい。

れ「海賊船・・・?」そうであるらしかった。黒く荒んだ帆船は、佇んでいるだけで不気味だ。

そして、やはりその船を使って遊んでいる子供たちがいるのだった。

「船長!宝箱の中身は空っぽです!」などと、やはり海賊ごっこをしているようだ。

また泥団子など投げつけられるかもしれないが、れいは近寄ってみた。打ち上げられた廃船の中身なども興味がある。


しかし今度の子供たちは、れいの姿に気づいても敵視する気配はなく微笑み続けていた。声をかけてくるでもない。

れいの方から近寄っていって、「海賊ごっこをしているの?」と尋ねる。「そうだよ」と微笑んでいる。そして、

「来て!」とれいの手を引っ張るだった。

子供たちがれいを引き入れたのは、操舵室だった。

舵の丸いハンドルをぐるぐる回すのが面白いようだ。気持ちはわかる。私はそれを、空の上でやったぞ。ぐるぐるをれいに見せて喜んでいる。

「宝島は見えるかー!」と男の子の一人が叫んだ。

別の男の子が、船の見晴らし台によじ登って遠くを見ている。「船長!今日も見えませーん!」

ふふふ。やはり男の子はこうなんだわ、とれいは微笑んだ。


そのとき。

船長室のテーブルの上に、大きなしわくちゃの紙が置いてあるのが目に入った。

れいはそれを凝視する。

れ「これって・・・」

世界地図だ!

ボロボロだが、地形も地名もかろうじて読める。ところどころに、褪せた血のような色で×印がされてある。1、2、3・・・世界中で4か所。ひょっとして宝の地図なのでは!?


れ「これは宝の地図なの?」子供たちに聞いてみる。

子「そうだよ」あっけらかんと言う。

どこまで意味がわかっているのだろう。海賊ごっこにおける宝の地図の役を果たしているだけ、なのか、本当に宝の地図で、そのことを知っているのか・・・。


れいは、サントハイムの地図なら見たことがあるが、世界地図というものは初めて見た。かろうじて認識できる文字から、サランかサントハイムはないかと探す。

あった!サランはないが、サントハイムの文字がある。大陸の真ん中よりも少し西。世界においてこんなに小さいのか!

これまで通ってきた国の名前が幾つかわかる。それを辿っていくと、なんとなく自分の旅の足跡がわかる。真ん中の大陸を東の端までなぞり・・・サンマリーノもある。ここから大きな海を渡ると・・・すごい!東南の位置にサマンオサがある。

一体こんなに広い世界を、誰が測量したのだろうか!?世界地図というものにも驚かされるれいだった。

サマンオサから南に来たはずだ。

アズ・・・ラン?たしか1つ前に通った街の名前だ!この地図にも記されている!

そしてその街のすぐ下に、×印が1つあるのである!


もしや!?


れいはドキドキしてきた!やはり海賊の財宝なるものは、人をワクワクさせるのだ。

海賊の財宝の隠し場所の1つが、この辺りの地域にあるという意味ではないのか!?

×印のそばにはメモ書きがある。


「はやぶさの剣」

「アドル家の財宝」


れ「!!」


《はやぶさの剣》とアドル家という貴族の財宝がここに眠っているという意味ではないのか!?


《はやぶさの剣》と言ったら・・・デイジーが探していた伝説の武器だ!

なんということだ!「デイジー!あったよ!」そう叫びたいが、彼女には届きそうもない。

れいは思った。


れ「私が取り返すしかないわ・・・!」

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