エピソード186 『天空の城』
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- 2024年7月22日
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エピソード186
ゆっくりと階段を上り、大きな扉をくぐる。無駄なくらいに背の高い扉だ。
「ごきげんよう」扉の横でもピンク色の兵士が待ち受ける。そしてやはり背中に翼を生やしている。
城に入ると、あちこちから人がれいのことを見てソワソワしている。皆、礼儀をわきまえているが、隙だらけで茶目っ気がある、ように見える。
兵「謁見の邪魔をしないように!」と兵士が釘を刺す。わかってはいるようで、だから近寄ってこないのだ。兵士ではない人々もピンク色が好きなようである。白いワンピースにピンク色の装飾か、または水色の装飾をした人が多い。そうでなくちゃいけないわけではないらしい。天空人は、ピンク色と水色が好きなのか。
敬語を1つ間違えた程度では怒られないのではないか、とれいは感じてホッとした。下界の城とは、少し雰囲気が違う。
大きな階段を上ると、そこは王の間だった。
れ「うわぁ・・・!」とれいは声が出そうだったが懸命に抑えた。
象よりも大きな体の銀色の竜が、優雅にれいを待ち構えている。王のための玉座はあるが、竜の体なので座れるわけもなく、その前に佇んでいる。
マ「ははは」マスタードラゴンは、まずは優雅な微笑みでれいをもてなした。
れいはそれを見て安心した。マスタードラゴンは、れいを安心させたくて微笑んだのだ。下界の王とは全く違う。
れ「は、初めまして。お呼ばれにあずかりました。サントハイムの国のれいと申します。
あのう、敬語に慣れていないもので、失礼があったら申し訳ございません」
マ「我が名はマスタードラゴン。空の上から世界を見守りし者。
敬語の乱れは一切気にせぬ。安心するがよろしい。
ようこそおいでくださった。サントハイムのれい。いや、サランのれい。そう名乗りたいであろう」
れ「は、はい」れいは微笑んだ。何でもお見通しなのだろうか。
マ「マスタードラゴンとは何なのか、自分がなぜ呼ばれたのか、わからないことだらけで戸惑うことだろう。
まずはお茶でも飲むとよい。一緒にテーブルに着けないのが心苦しくはあるが。ははは」
体が大きいからテーブルには座れない、という意味だろう。
従者たちがれいに小さなテーブルとソファを持ってくる。ハーブティーだろうか。ラベンダーの良い香りがする。
王の謁見とは立ちつくしながら行うものかと思っていたが、ここの王様は身分もない訪問者にソファを用意してくれるのだった。
マ「話は長くなるので、本当に茶をすすりながら聞いてもらいたい。
まず・・・そなたを招待した一番の理由から話そう。