エピソード189 『天空の城』
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- 2024年7月22日
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更新日:6月16日
エピソード189
1週間の後、れいは「そろそろ出ます」とマスタードラゴンに告げた。
れ「でも、魔法の先生のところにはどうやって行ったらよいのでしょうか?」
マ「ははは。心配無用。迎えにこさせる。
今、思念を送る」テレパシーのことか。
数秒の後。王の間から扉続きになっているテラスから、何やらバタバタと音がする。そして、
バターン!扉が豪快に開かれた。
?「お待たせー!」

れ「!!??」れいは目をまん丸くした。
?「じゃなかった、お待たせいたしましたマスタードラゴン様」
マ「ははは。演技の練習もがんばりたまえよ」
れ「うん?何かいい匂いがしますね」
従「バーバラ様!お口の周りにハチミツが付いたままですよ!」従者が慌ててバーバラにハンカチを差し出す。
バ「あらまっ!
だって急にお呼びが掛かったんですものぉ~」
れ「こ、この人が・・・大魔法使いバーバラ様・・・?」
言動が跳ねっかえりなだけでなく、見た目は無邪気な16歳にしか見えないのだが・・・
マ「ははは。にわかには信じられないだろうが、少なくとも魔法に関しては超一級品だ。私ほどではないがね」
バ「あぁ、大魔法使いとかバーバラ様とかやめてね?
バーバラでいいから♪」
れ「あ、はい。
ていうか、どうやってお越しになられたのですか!?」
自分の経験則から言えば、上空5,000メートルまで上るのに2時間は掛かったが・・・
バ「え?《ルーラ》で来たのよ。
知らないの?瞬間移動の魔法」
れ「あ!イムルの町で聞いたことがあります。
たしか、失われた古代の、伝説の魔法だとかって・・・」
バ「そうよ。私が習得した頃はまだ失われてなかったってワケ」
れ「え!」
バ「きゃははは!あなた幾つなんだって?
私、えーっと、300歳くらいだったかしら!」
れ「さ、300歳!?
16歳に見えますが・・・!」
バ「そうよ?だって若くいたいんだもん♪
魔法のチカラが使えるなら、戦闘以外にも色々考えるわ。
まぁ若さを保つ魔法って、結局のところ《ホイミ》だけどね。
この城にいる天使たちだって、あなたが思ってるより年いってんのよ!きゃははは!」
れ「!!」れいは色々と圧倒されてしまった・・・。
バ「さぁそろそろ行きましょ。お話なら向こうで幾らでも出来るわ」
れ「あ、はい。お願いします」
バーバラは、テラスではなく正面玄関へ向かって歩いていった。
マ「私の見送りはここで勘弁させてもらう。
それではがんばってくれたまえ。
2度と来れないということもないだろう。惜しむ必要もない」
れ「はい、どうもありがとうございました!」
れいたちは王の間から階段を降り、廊下を歩いて正面の大きな扉を出た。
緩い階段を降り、雲の広場まで出る。
天空城の住人の多くがれいを見送りに出てきた。
「がんばってねー!」
「また来てねー!」
「《世界樹のしずく》がなくなったら、また来るんだよ」
れいはにっこり微笑んで、皆にはいと返事をした。
すると、小さな女の子がいつの間にかれいのそばに来た。
少「はいこれ、お姉ちゃんにあげる♪」
皆と同じように可愛らしいが、皆とは異なるポップな服装をした女の子だ。10歳くらいか。こんな子いたっけな?
彼女はれいに、ペロリンキャンディーを差し出した。
少「甘いものは少しだけにするのよ?食べ過ぎたらダメなの」
れ「え、えぇ。どうもありがとう」
少「これから甘いものがたくさん出回る時代が来るわ。だから覚えておいてね?」
れ「うん。わかったわ」
少女は最後に、れいをぎゅーっと抱きしめた。
バ「じゃぁみんな。またねー♪」
バーバラは最後にさらっと皆に挨拶をすると、れいの肩に手を乗せた。
バ「《ルーラ》!」
彼女がそうつぶやくと、二人の体はぴゅーっと空を飛んだ!