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エピソード190 『天空の城』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年7月22日
  • 読了時間: 3分

エピソード190


一瞬よりも短く、永遠よりも長いような奇妙な時間感覚がしたと思ったら、れいたちの体はどこか山の中にいた。小屋の前に立っている。

れ「えぇー!?」

バ「そう驚かないのよ。《ルーラ》を知ってるんでしょ?それにすぐに慣れたほうがいいわ。

 ここはクレージュの山の上よ。魔法の修行するのにお城の中でドンパチするわけにいかないでしょ?」

れ「あぁ、なるほど」

バ「それ以外にも色々理由があるの。色々しごくからね!」

れ「は、はい」

ただのお茶目な16歳ではないようだ。ゴクリ。れいは唾を飲み込む。


バ「あぁ、まずだけど、『なんでバーバラが師匠に選ばれたんだろう』って思ってるでしょ?」

れ「心を読む魔法も使えるのですか?」

バ「魔法なんか使わなくてもわかるわよ!

 まず一つ目に、私くらいざっくりしてるほうが師に向くから。

 優しすぎる人は先生に向かないのよ。座学ならいいかもだけど、しごく科目には向かないの。私は容赦ないからね!」

れ「はぁ」言わんとしていることはわかる気がする。

バ「それと、実際私、強いから。

 マスタードラゴンほどじゃないけどね。その次くらいじゃない?魔法使いとしては」

れ「そんなに!?」

バ「ていうか私、魔法使いじゃないのよ」

れ「えぇ!?」この人は息する暇もなく奇想天外だ・・・。

れ「あぁ、賢者ということですね!」

バ「あぁ、賢者でもあるけどね。でも賢者でもないの。

 勇者でもあるけど、勇者でもないの」

れ「えぇ!勇者でもあるのですか?

 そして、勇者じゃないのですか!?」

バ「何ジョーダンばっかり言ってんのかって思うかもしれないけど、これもうお勉強はじまってるからね!

 そう。強い魔法使いになるには、どうしたらいいって思う?」

れ「強い魔法を使えるだけでなく、体力とか、体が強くないとだめだと思います」

バ「そうそう!あなたたしかに筋がいいわ!

 れいちゃんだっけ?あなた本当に最強になれるかも!」

れ「あ、ありがとうございます」

バ「私なんかがウッカリ最強の魔法使いになっちゃった理由が、まさにそれなの。

 私たちが冒険してた頃はね、1つの職業だけじゃなく、幾つもの職業を極めることが流行ったのよ」

れ「魔法使いだけじゃなく、戦士も極める、ということですか?」

バ「そうそう、そういうこと!

 でも2つだけでもまだまだ甘いの。10個もそれ以上の職業も極めるのよ」

れ「そんなに!?」

バ「ぶっちゃけ私はそんなに向上心あったわけじゃないんだけどね。

 仲間たちがそうやってたら、つられるじゃない?

 そしたらいつの間にか、僧侶も戦士も武闘家も・・・20職くらい極めちゃったってワケ」

れ「す、すごい・・・!」

バ「それくらい高い目標を持つべきなの。

 そうしたら圧倒的に強くなれるわ♪

 れいちゃんが察したとおりで、魔法使いがすごい魔法ばかり追い求めたって、大して強くならないのよ。実践でまるで役に立たたないヨボヨボにしかならないの。大ねずみ倒すんならいいけどね、魔王になんか太刀打ちできないの」

れ「はい。わかります」

バ「だかられいちゃんにも、色んなことやらせるわ!覚悟しといて?」

れ「は、はい!」

どうやらバーバラ先生は本当に、ただのおちゃらけた少女ではないらしい・・・!

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