エピソード194 『天空の城』
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- 2024年7月22日
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エピソード194
魔物は強く、道程は熾烈を極めたが、れいは冷静さと気丈を失わなかった。
なぜか?
れいはずっと自分に「大丈夫。海賊の洞窟よりもマシだ!」と言い聞かせ続けたのだった。フォンニャ洞窟も熾烈ではあるが、海賊の洞窟とは違い這いつくばらないと通れないような低い道はないし、魔法をぶつけて障害物を壊さなければ進めない難解な道もない。フォンニャ洞窟はただただ広く、そのぶん道がとても広くて高い。圧迫感はない。長く険しい地を進むこと自体は慣れている。ただ暗いだけだ。
れいは自分が得た免疫によって、地獄のような洞窟を絶望せずに進むことが出来たのだった。世界をさすらい続けたことが、れいを助けたのである。世界をさすらい続けたことが、れいを強くしたのである。
「あぁ、たしかに魔法学校に通っても魔王を倒せる魔法使いにはなれないな」と、れいはふふふと笑った。
バーバラの修行のお陰でとても強くなったが、それだけではやはり、すべての苦難を乗り越えられるようにはなれなかったのである。
人は、遠回りをしながら強くなる。
一向に外光が差しこむ気配がなく、そろそろ途方に暮れてきたが、終始自然によって造られた乱雑さを貫いてきたこの洞窟に、人工の扉が立ち塞がった。しかし鍵がかかっていたりはしない。
れいが恐る恐るその扉を押すと・・・
その先にはなんと、また大きな洞窟空間があった!そしてうっすらと明るい。
東メボンで見た地底都市に似たものだ。あそこには数多くの民家があったが、ここには1つの城が見えるのみ。そしてあそこよりは空間が薄暗い。
城はおどろおどろしく、もしかして東メボンの地底都市に繋がっていたなどという期待をまったく抱かなせい。そしてれいは思うのだった。
地底都市だから善なわけではなく、地底都市だから悪なわけではないのだな。
竜だから善なわけではなく、竜だから悪なわけではないのだな。
宗教だから善なわけではなく、宗教だから悪なわけではないのだな。
物事は、その見た目や名前によって善か悪か定義できるものではないのだ。