エピソード22『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』
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- 2024年5月1日
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エピソード22
族長は去った。
アミンはしばらく、複雑な感情の渦にさいなまれながら、うつむきながら茫然としていたが、やがて目に生気を取り戻した。
ア「で、一体何があったんだい?どうして山火事が?」
ハ「朝飯を探しに行ったんだ」
な「そしたら、天使様みたいな人に《メラ》の魔法を教わったの!」
ア「え!?何を言ってるんだ!?」
ゆ「森の奥で、不思議な人に出会ったの。
聖書に出てくる大天使様みたいな姿をしていたわ」
ア「大天使だって?」
な「それでね、魔法の儀式を授けよう!って」
ゆ「私に何か、イニシエーションとかなんとかいうのを授けてくれたの。
そしたら本当に、《メラ》が使えるようになっちゃったの!」
ハ「大天使って、ドワーフの仲間じゃないのか?」
ア「大天使・・・?」
アミンはいぶかしげている。
ハ「なんだよ」
ア「それで?
《メラ》の次には何の魔法を授けてくれた?」
ゆ「え?《メラ》だけよ?」
ア「それは大天使なんかじゃない!
何かわからないけど、とにかく悪いやつだ!!」
な・ゆ・ハ「えぇー!!??」
な「大きな翼の、立派な人だったよ!?」
ア「妖精だって悪魔だって、どんな姿にも化けられるんだよ。
そして、大天使の姿に化けて人を誘惑するのは、悪魔の常套手段・・・」
ハ「でも妖精だって天使だって大天使の姿に化けられるんだろ?」
ア「姿だけでは何の証拠にもならない。その通りだ。
でも天使なんかじゃない確証がある」
ゆ「どういうこと?」
ア「魔法を授けるとき、それが対極の属性を持つ魔法なら、必ずペアで授けるんだ」
な「え???」
ア「《メラ》は火の魔法だろ?それが小火(ぼや)を起こしちゃったらどうする?」
ゆ「水で鎮火しなくちゃ」
ア「そう。だから《メラ》を授けるときは、それが破壊の悲運を招かないために、必ず《ヒャド》の氷の魔法も授けるんだ。それが光の者のやり方だよ。
魔法が、破滅を起こさないように細心の注意を払う。
《メラ》しか教えなかったということは・・・」
ゆ「トラブルを起こすことを見越していた・・・!?」
ア「そういうことさ。《メラ》を覚えたヤツが小火(ぼや)を起こしたり友達をヤケドさせるのはもう、お約束なんだ。
だから師は、魔法を授けるだけじゃなくてその使い方も、危険も、耳がタコになるほどしっかり教える。それでも小火を起こすから、しばらくは一緒にいて監視する。これは、《メラ》を教えるときや初めて魔法を教えるときは、なおさらさ」
な「その人、すぐに消えちゃったよ」
ア「だろ?
おまえたちが勝手に小火を起こし、それが山火事にまで発展するのを狙ってたんだ。
または、おまえたちはちゃんと火の始末をしたけど、ヤツは森に火を放ったんだ!」
ハ「なんてこった・・・!!
オレら悪者に狙われてんのか?魔王に!?帰ろうぜもう!」
ゆ「か、帰り道は・・・」
ア「もう、ないよ。
巨大な悪に狙われてるのか、小さな悪魔のいたずらなのか、それは定かじゃない」
ゆ「あんた、闇の支配者をやっつけるとか言ってたじゃない!」
ハ「お、おい!オレのせいなのかよ!」
ア「もう行こう。この里の人たちの心証はもう良くないはずだ。
本当は今日も戦闘訓練に費やそうかなと思ってたんだけど、そんな悠長なことは言ってられそうもないや」
な「どこに行くの?」
ア「とりあえず森を抜けるために、北を目指して。
その間に里かなんかあれば立ち寄っていきたいね」