エピソード27
まだまだ森は続く。が、心なしか圧迫感が薄れてきているような気もする。
森から抜ければ国境に至るのだろうか?新しい国に早く辿り着きたいが、未知なる国は恐ろしい。
魔物を倒しながら歩を進め、そろそろ新しい何かに立ち向かわなければならないような気がして、ハラハラしてきた。
2日の野宿を挟み、そして森が開けた・・・!
な「はぁあ~!空気が美味しい!」と感じはしたが・・・
ゆ「荒野はまだ続くのね(汗)」
ハ「まぁ、森の隣に街があるわけもねぇな」
ゆ「ここはもうカルベローナかしら?まだエンドール?」
ハ「知らねぇ」
ア「森の外かぁ。僕にとっては新鮮だぁ」
ここからはアミンにとってもアウェイだ。その真実に気づいた一行は、少し緊張感が増した。
森を出てすぐに、小さな町か村はあるのではないかと予測したが、そのとおりだった。
ドワーフの里とはまったく規模が異なる、人間の町へと辿り着いた。
―トルッカの町―
不思議な感覚がした。さしずめ森に潜った浦島太郎だ。
町は町だが、ななたちが住んでいた街とはまるで雰囲気が違う。そう。いつの間にかタイムスリップでもしてしまったかのように、異世界に転生してしまったかのように、町の雰囲気も人の衣服もガラッと違うものに変化していた。私たちの言葉では、「中世」の雰囲気である。
しかし、ドワーフや原住民族の里を経た彼らにとって、その変化はあまり強烈には感じていなかった。いつの間にか、どっぷりと異世界の住人になっていたのだ。森は、広大な転移装置でもあった。
ゆ「なんか急にいっぱい人がいるわね」
な「ケーキも売ってるかなぁ?」
ハ「そうだ。宝石をゴールドに両替えしなきゃならねぇんだろ?」
その中世のような雰囲気に、不思議と彼らはすっかりなじんでいる。
アミンは町人に話しかけている。
ア「ここはエンドール?それともカルベローナ?」
町「どっちでもないよ」
ア「えぇ?」
町「緩衝帯ってやつだ。
いちおうカルベローナ領に属してはいるが、エンドールの奴らが滞在してても文句を言われることはない。だから色々ワケアリなエンドール人がたむろしてたりもする」
ゆ「どこでもない国・・・」
ア「へぇ。そんな場所があるんだね」
町「もしかしてお前ら、森を抜けてきたってわけじゃねぇよな?」
ア「いや、そのまさかなんだけど・・・」
町「大丈夫だったのか!?」
ア「何が??」
町「あれだよ!山火事!」
町人は背後の山裾を指さした。
4人「!!!!」
4人が一斉に振り返ると、左前方の森は焼け跡となり大きくえぐれていた!!
ハ「こ、こんなに延焼していたのか・・・!」
ゆ「私の不注意が、地球の形をこんなにも変えてしまったなんて・・・!!」
ゆなは人一倍、この惨状に心を痛めた。
な「ゆなのせいじゃないよぉ!」
ゆ「でも、私が魔法に誘惑されていなかったら・・・」
な「ゆなのせいじゃないってばぁ!」
ななは懸命に、ゆなを抱きしめて慰めるのだった。
4人はまず両替え屋を探し、魔物との戦いで貯めた宝石をゴールドに換金した。
400ゴールドほどになっていた。数日宿屋に泊まるくらいのお金はありそうだ。
宿屋を探し今日の寝床を確保して安心すると、食事に出掛けることにした。
宿を出ようとしたとき、店主が彼らを呼び止めた。
宿「おや?荷物はどうしたんだい?」
ゆ「部屋に置いていくつもりだけど」
宿「持ってったほうがいいよ!この町は少し物騒だからね!
盗っ人とかいるし、妖精がいたずらをしてくって噂もあるしね!」
な「妖精が??」
ハ「おい、お前か?」ハヤトはアミンの頭をポカンと殴った。
アミンはあかんべーと舌を出して反撃した。
ゆ「持っていきましょう。用心にこしたことはないわ」
道すがら、知らない男たちは4人のことをジロジロと見た。ドワーフがいるからか?それもある。ななたちの服装が、ちょっと奇妙に感じられたのだ。エンドールの流行は、世界の常識というわけではないようだった。
それに、ハヤトがまことに奇妙な武器を持っていたからだ。
《はやぶさの剣(偽)》
男「オマエなんだそのダッサイ棒切れは!」
ハ「カ―――!!!」ハヤトは顔を真っ赤にした!!
周囲にななやゆなしかいない間は「カッコいい」と感じていたその武器が、急にすさまじくダサく感じたのだ!
ただの棒と間違ってくれればまだよかったのに、「剣を模した工作」であることが皆には容易に見透かされ、そしてそのクオリティの低さに失笑されるのだった・・・。
しかしそれは、「冒険ごっこ」がいつの間にか「冒険」に熟していることを意味しても、いたのだ。
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