エピソード29『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』
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- 2024年5月1日
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更新日:2024年6月30日
エピソード29
アミンは残りの2人を起こした。
4人は屋上のガーデンテーブルに腰を下ろし、珍しい来客を説明した。
ハ「へぇ、エルフか。ドワーフよりずっとかわいいぜ。
冒険はこうでなくっちゃな!
でも・・・オレの武器を隠したのも、おまえだな?」
エ「そうです。ごめんなさい・・・」
な「あっ!昨日わたしに話しかけた??」
エ「そうですそうです!」
ゆ「妖精なら、同じ妖精のアミンに話しかければよかったじゃない?」
エ「そうなんですけど、ど、ドワーフさんはちょっと・・・」
ハ「ちょっと?」
エ「ドワーフさんはちょっと、く、くさいもので・・・(汗)」エルフは両手の指をちょんちょんと合わせて、気まずそうな仕草をした。
4人「えーー(汗)」
ア「ちょっと傷つくなぁ(泣)」
ハ「おまえ臭いのか?別にそう感じたこともなかったぞ?」
ゆ「アンタもちょっと臭いから・・・」
ハヤトはゆなの頭をひっぱたいた!
ア「でも、聞いたことがある。
ドワーフという種族は、他の妖精からすると『臭い』と感じるらしい。そこから『汚い』『気持ち悪い』と敬遠されることがある・・・。だからドワーフは、森の奥とか地底とか、他の妖精からも遠い場所で暮らすことが多い・・・」
エ「はい・・・。
別にドワーフさんが嫌いなわけじゃないんです。苦手というか、なんというか(汗)」
な「妖精さん。お名前は?わたしはなな♪」
ななは空気を変えようと努めた。
エ「わたしは、リラといいます。エルフという種族の妖精です」
リラは人間のレディのように、スカートの裾を広げて可愛く挨拶をした。
ゆ「それで、なんでイタズラなんてしたの?」
リ「あぁ、かわいい戦士さん方!
どうかわたしたちにチカラを貸してくれませんか?」
4人「えーー!!??」世界一へっぽこな冒険者パーティーなのに!?」
な「むしろわたしたちにチカラを貸してくれませんか(笑)」
リ「えーー!!??」
ゆ「私たち、どうにかこうにか崑崙(こんろん)の山を抜けてきたけど、ぜんぜん弱い冒険者なの(汗)」
リ「やはり、そうなのですか・・・」リラは困惑している。
ア「この町にはもっと強そうな荒くれが大勢いるようだけど。
そいつらに頼んだら?」
リ「いいえ、わたしたち・・・
ドワーフも苦手ですが、男の人が苦手なんです」
ゆ「なるほど」皆まで言うな、とゆなやななは思う。
リ「それに、あなた方からたしかに、大きなオーラを感知したはずなのですが・・・」
な「オーラ??」
リ「えぇ。素晴らしい、新時代的な人たちであるはずです」
ハ「おまえのスカウター、壊れてんじゃねぇのか」
ハヤトはどこぞのバトル漫画の戦闘力測定器を思い出し、眼鏡をクイっといじるような仕草をした。
リ「とにかく一度、わたしたちの妖精の村へと来てはいただけませんか?
ポワン様があなた方をお待ちです」
ハ「それって、カルベローナとかいう北の国にあるのか?」
リ「いいえ、西に反れたところです」
ハ「じゃぁ道草だ!
はやくカルベローナに行って武器を探そうぜ!」
リ「そ、そうですか・・・。お急ぎの旅なのですね」
ゆ「ちょっと待って!
リラたちのお困りごとって何なの?一大事なんじゃないの?」
リ「一大事とも言えますし、一大事でないとも言えます」
な「うん???」
ア「話してくれよ。てっとり早く」
リ「は、はい。
実は最近、南の森が大きな火事に遭ったんです。
わたしたちの自然が大きく破壊されてしまいました」
ゆ「!!!!そ、それ・・・」
ゆなはまた大きな罪悪感に胸がかき乱された。
ゆ「それ、一大事じゃない!
それに、ごめんなさい!
その火事の原因って私たちなんです!!ごめんなさい!!」
リ「まぁ!そうだったのですか!?
でもお急ぎの旅なのでしょう?
一大事ですが、一大事とも言い切れないのです」
ゆ「どうして!?」
リ「森はやがて、もとに戻ります。
エルフは何百年も生きますから、数十年を待つことは普通と言えば普通なのです。
地球の生態系にそう大きな影響を及ぼすわけでもないでしょう」
な「ていうか、エルフさんは森に住んでないのに、森のお直しをするの?」
ア「ぼ、僕たちドワーフのために!?」
ゆ「ドワーフが嫌いだっていうのに?」
リ「ドワーフのためにといいますか、みんなのためにです。
ドワーフたちのためでもあります。
苦手かどうかは関係ありません。相互協力で生きる仲間ですし」
リラたちはどうも、人間とはやや異なる思考で生きているようだ。
ゆ「博愛、か・・・!」
ア「話はなんとなくわかってきたけど・・・」アミンは両手を頭の後ろで組んだ。
ゆ「お願いみんな!道草をさせて!
リラたちの森直しのお手伝いをしましょう!!」
は「マジかよー!武器探しはぁ?」
ア「どうせ遠回りしながらお金を貯める必要があるだろ!」
ゆ「いいよ!私一人でもリラに着いていくから!」
リ「ゆ、ゆなさん・・・!!!」
な「わたしはゆなに着いていくぅ」
ハ「わかってるよ!ちょっとグチっただけだっつの」ハヤトは四面楚歌になりそうなのを察知して、堪忍した。
リ「お礼は出来るとは思います。
1万ゴールド程度の品ならお返しが出来るかと」
ハ「マジか!《はじゃのつるぎ》が3本買えるぞ!!」
ア「よし、決定だな」
リ「ありがとうございます!!」
妖精のリラは、小さな小さな体で大きく大きく安堵した。背中の羽根も、嬉しそうに虹色に輝いた。