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エピソード30 『天空の城』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年7月22日
  • 読了時間: 2分

エピソード30


入国審査を終えて平野に降り立つと、ボロ馬車を引き連れる男たちが何人も、れいに群がってきた。

馬「ボンモールまで5,000ゴールだ!乗っていかないか?」

馬「いいやこっちは4,900だ!どうだ?」

馬車の勧誘である。


ボンモールまで5,000ゴールド?その価格はどうなのだ?

詳しい距離は知らないが、単純計算をしてもサントハイムから半分が経過している。サントハイムから1万ゴールドの距離を、残り半分。一見すると5,000ゴールドで理屈が通るが、このボロい馬車で5,000となると筋は通らない気がする。これはきっとボッタクリなのだろうと、れいは察した。勝手のわからぬ異国人の足元を見た、悪徳勧誘なのだ。

サントハイムでお高く留まったお貴族馬車の御者たちとひと悶着したことは、無駄ではなかったようだ。それによって事前に相場を知ったのである。

「要らない」と言ってもしつこく食い下がる馬車商たちだったが、それでも懸命に突っぱねた。そのうち諦めて離れていった。「根負けせずに頑張る」ということを、ここでれいは覚えた。


川沿いには食べ物や雑貨を売る小さな露店が幾つか並ぶ。れいはその人たちに「ボンモールはどっちですか?」と方角を聞いた。その通りに進もうとして、しかし引き返す。もう一度露店商に尋ねる。「ボンモールじゃなくて、一番近い町はどこですか?」と。

れいにとってボンモールという王都に赴くことはさして重要ではない。それよりも、もっと近くに手ごろな町があるならそこに寄ったほうが健全だ。

北に行けば町があるという。歩けない距離ではないそうだ。


川を渡ると、魔物の生息域ががらりと変わった。

ドラキーやいっかくうさぎはもういない。

冒険者の初心者よ。橋を渡るなら気を付けたまえ。



やがて、イムルという町に辿り着いた。

規模としてはフレノールと同じくらいだろうか。しかしフレノールよりも住民に活気があるように感じる。活気があるのかやかましいのか、細かいニュアンスはわからない。子供や若者の姿が多く見られる。

複数軒ある宿屋の値段や設備など見比べる傍ら、ざっと町歩きだ。

武器屋があり防具屋があり、生活雑貨の店や名産品を扱う店があるが、この町で特徴的なのは、大きな学校があることだった。しかも普通の学校ではない。「イムル魔法学校」という表札が掛かっている。

れ「魔法学校・・・!」あわよくばれいが入学したいくらいだ。

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