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エピソード37 『天空の城』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年7月22日
  • 読了時間: 4分



エピソード37 『天空の城』

エピソード37


れいはその日の夕刻、改めてヨーダのところを訪れ、魔法の教科書めいた本を1冊購入させてもらった。

れ「これで夜もやることができたわ」

サランに居た頃、れいたちは夜の8時には眠りに就いた。そして朝の4時には鶏の鳴き声に起こされた。朝のとても早い生活だった。

しかし冒険によってもっと都会に出てくると、町のムードからして夜8時では眠る気にならない。早朝に鶏に起こされることもない。自然と夜11時くらいまでは起きていて、朝7時くらいに起きる生活サイクルになっていた。

すると、夕飯を食べたあと、宿の自室で過ごす時間がとても長くて手持ち無沙汰を感じていたのだ。

れ「なになに?『イオ系魔法とは、空気中の五大元素を圧縮して爆発を起こす魔法である。』」

読書をして座禅瞑想をする。その暇つぶしを得たことで、れいの夜間も充実するのだった。



翌日。れいは町の外に出て延々と戦闘を繰り返した。色々な戦い方を試してみた。

魔力が枯渇すると宿に戻り昼寝を挟む。起きて少し元気になるとまた戦いに出た。

メラを唱えて魔物を仕留めたあと、れいはふと思った。

イオの魔法はどうやったら習得できるんだろうか?

ローズから贈られた《マグマの杖》によって、イオの魔法を垣間見ることは出来た。メラとは異なる爆発が起こる。

昨日読んだ本によると、空気中の五大元素を圧縮して爆発を起こす、と書かれていた。

五大元素?五大元素とはたしか、「木・火・土・金・水」だ。空気の中に土や木があるか?れいは「元素」というミクロな概念をなんとなく理解しているが、そうは言っても空気の中に土や木があるとは思えない・・・。かといって魔法学者の解説がでたらめということもないだろう。

れいは目を閉じた。

すると脳裏で、空気中の名も知らぬミクロな元素が混ざり合って爆発する様子がイメージされた!

れ「あぁ、きっと木・火・土・金・水とは違う元素の圧縮爆発なんだわ!」

そう閃いた瞬間・・・!


ヒィィィン・・・!

れいの体が青白く光った!両手が熱い!

そして「イオの魔法を会得した」という感覚を、れいは覚えた!

れ「ほんとうに・・・!?」


次に遭遇した魔物に、早速試してみる。

れ「むぅぅぅぅ、イオっ!!」

ボボボボンっ!

なんと、《マグマの杖》を振りかざしたときと同じような爆発が起こった!

おばけキノコの群れをやっつけた!

れ「出来たわ!私にもイオが撃てた!!」

れいは生まれて初めて、攻撃魔法を自力で習得したのだった!

自分のチカラで複数の魔物全体に一挙にダメージを与えらえる。れいは確実に強くなった!



れいは《イオ》を覚えて、益々意気揚々と戦闘訓練を重ねた。

するとそこに、ヨーダの姿が現れた。れいを視察に来たのだ。

ヨ「おやおや、本当に地道な訓練を重ねておる。感心じゃのう」

れ「あぁ、ヨーダさん!」

ヨ「しかもおぬし、イオの魔法をどこで会得したんじゃ?」

れ「戦っていて、自分で会得しました!

 でもこれもヨーダさんのおかげなんです。あの本に書いてあることをイメージしたら、イオの魔法のことがわかった気がして・・・そしたら使えるようになったんです!」

ヨ「なんと!イオを自力で。ほんに素晴らしい子じゃ。

 おぬし・・・

 一人旅の壁にぶち当たっても、懲りずに冒険を続ける強い意志があるのじゃな?」

れ「え?えぇ。そのつもりですが・・・」

ヨ「ではおぬしに、ワシからも1つ、魔法を伝授してやろう。

 《スカラ》という魔法じゃ」

れ「えっと、えーっと・・・」そんな魔法があったっけ?とれいは焦った。

ヨ「ほっほっほ。攻撃魔法ではない。

 スカラは、身を固める魔法。

 敵の物理攻撃に対する守備力をグンと上げる。

 何の魔法を授けようか少し迷ったがな・・・

 おぬしは重い鎧をまとわずに戦っていくじゃろう。すると守備力に致命的な弱点が生じる。それを早めにカバーしてやったほうが良いかなと思ってな」

ヨーダは地面に魔法陣を描き、れいに《スカラ》の儀式(イニシエーション)を施してやった。

れ「ありがとうございます」

ヨ「よいか?旅だけでなく、戦闘も焦らんことじゃ。

 一撃や二撃で勝敗を決することが出来そうもない、と察したなら、焦らず《スカラ》で身を守るんじゃ。

 長期戦になればなるほど、《スカラ》は意義が大きくなる。

 初手に攻撃をせずに踏みとどまることは、なかなかに我慢が要る。血気盛んな戦士たちは軒並みそれが出来ない。

 しかし魔法使いや僧侶は、そうした冷静さを持っていなくてはならない」

れ「わかりました」

ヨ「イオを覚えて調子に乗るなよ。剣の腕も鈍らんようにな。ほっほっほ」

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