エピソード38
イムルの村には結局、1週間も滞在することになった。
魔法の町ということで、れいにとって興味深いもの・ことが多いのが大きな要因だろう。
魔法学校の子供たちやその周りの大人たちは、町の中で珍しい魔法の名前を叫んでいたりする。「それはどんな魔法なの?」とれいは尋ねる。なるほど。冒険者を眠らせてくる魔物もいるのね。勉強になる。
イオを会得したことで、れいは少し自信を持った。いやこれまでも何かスキルアップするたびに「そろそろ一人前だわ」と感じてきたのだが、イオの会得はことさら1つの節目感があった。これにより、弱い魔物なら剣でも魔法でも、そして集団でも倒せる目処が立つのだ。
これまでは自分のことで手いっぱいだったが、町を歩きながら「困っている人はいないかな」という意識が加わるようになった。そして町中で不意に大ねずみに襲われて困っている家族など、助けてやるのだ。
歩けなくて困っている老婆のために、森で薬草を摘んできてやることも出来る。
また、住人や他の冒険者たちと会話する自信がついてきた。つまり、話しかける積極性や応える受容性が。まだまだ教わることばかりだが、冒険や魔法について、「人の話についていけるようになってきた」と感じられた。だから人との会話を楽しめる。れいは少し愛想が良くなった。笑顔が上手くなった。
華奢で威圧感のない、女の冒険者だからこそ話しかけてくる女子供もいるようだった。子供と話すのも楽しい(イムルの魔法学校の子供たちは生意気なのが多かったが)。
すると、1つ1つの町の中で、やれることが増えてきた。武器屋と宿屋と戦闘をハシゴするだけのルーチンではなくなってきた。
ときには、町の中で人と会話するだけで一日が終わることもある。
夜には読書の時間もたっぷり取れる。
初歩魔法の本を読んだことで、れいにもなんとなく攻撃魔法の体系がわかってきた。
《メラ》属性 敵一体に有効な炎の魔法
《ギラ》属性 集団の敵に有効な閃熱(炎)の魔法
《ヒャド》属性 氷の魔法。対象は一体だったり集団だったり
《バギ》属性 集団の敵に有効な風の刃の魔法
《イオ》属性 集団の敵に有効な爆発の魔法
これが攻撃魔法の基本だ。
《バギ》属性に関しては僧侶が得意とする傾向にあるらしい。
他にも、敵を即死させてしまう魔法や、勇者が扱う《デイン》属性という雷の魔法なんかもある。
れいの想像よりも、この世界の攻撃魔法はバリエーションに富んでいる!すべてを習得するのは気が遠くなりそうで、すべての名前を知識として覚えるだけでも大変だ。イムル魔法学校の子供たちの気持ちが少しわかった。
さらに言えば、魔法は攻撃魔法ばかりではないのだ。回復魔法や、仲間を補助する魔法、敵を幻でかく乱させるような間接攻撃魔法なんかもある。どれにも属さない、冒険を手助けするためのたいまつ代わりの魔法などもあるらしい。
れいはまず、《メラ》、《ギラ》、《ヒャド》、《バギ》、《イオ》という5つの属性の名前を覚えることにした。
メラ、メラミ・・・なんだっけ?それぞれの属性の中級、上級魔法についてはまだ記憶する余裕がない。
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