エピソード49
森を抜けた頃、ついには国境に辿り着いた。カルベローナ国領とギュイオンヌ国領の国境だ。
長い長い、端が見えないほど長い壁が立ちはだかっている。そして関所が設けられているのだった。
馬車が到着すると、何人もの兵士が立ちはだかった。
「積み荷を見せろ」という問題ではなく、「通せない」と言うのだった。
ア「旅の事情も聞かずに『通せない』はないんじゃないか?」アミンは食い下がる。
兵「事情はどうあれ、カルベローナの住民との国交は許されない」と頑なに言うのだった。
ゆ「そう言えば、ぜんぜん旅行者にも出会わなかったわね」
ベ「なぜですか?せっかくここまで来たんです!」
兵「なぜですかもないだろう。
カルベローナとギュイオンヌは昔から仲が悪い。そのうえ辺境は密入国者のターゲットにもなりやすいのだから、警備が重厚なのも当然だ」
ベ「仲が悪いのか。し、知らなかった・・・」
な「知らなかったの??」
ベ「芸術ばかりやっていたもんでね。政治にはまるで疎かった。
道理で、僕の依頼を引き受けてくれる人も現れないもんだ」
キ「そこをどうにかぁぁ、なりませんかぁぁ?」キキは目をうるうるさせながら言った。
兵「ならん!」
兵士には効かなかった!
30分ほどグズグズと粘ったが、兵士たちは断固譲らないのだった。
一行は関所越えが叶わないことを理解した。しかしこのまま帰るのはしんどいと見えたため、「どこかに休息の出来る町はないか?」と質問を変えた。
兵「分離壁沿いに北に一里も行くと、小さな村はある。
しかし山賊めいた者たちの住処だとも聞くが・・・」
平和な町ではないのか。
物騒なところのようだが、行ってみる価値はあるか、と判断した。
北へと進路を変える。両国を分断する壁は延々と続くのだった。
ア「よくもまぁこんな大きな壁を、懸命に作ったものだなぁ」アミンは妙な感心をするのだった。
やがて、兵士が言っていたものと思われる小さな集落を発見した。
馬車の迫る音を聞いて、村人の一人が物珍しそうに出迎えた。
村「なんだおまえらは?商人か?」
ア「ただの旅人だよ。
国境を越えたかったんだけど、関所で止められちゃった」
村「買うものなんて何もないぞ。買うカネもない」
ア「だから商人じゃないってば」
村「ふうん。どうかね」
ゆ「休息できないかなと思って来たんです。長旅だったので」
村「見てのとおり、都会者を満足させるものは何もないさ」
ベロニカはさらに踏み込んだ。
ベ「いや、で、できれば・・・関所を越える手段など入れ知恵貰えないだろうか?
そのためにはるばる、国を捨ててきたのだ」
村「おいおい、それぞれ言うことバラバラじゃないか?」
ゆ「休みた・・・」とゆなが話そうとすると、アミンが遮った
ア「いや、ベロニカに話させよう」
ベ「国境を越えることにこだわっているのは僕だ。
この人たちは付き合ってくれているだけ。
僕は、国を捨てて違う人生を歩みたいんだ」ベロニカは真剣な眼差しで言った。
村「ほう・・・?
本当に、ものを売りにきたわけじゃないんだな?
俺らの暮らしを咎める気もない・・・?」
ベ「あぁ。チカラを貸してほしい」
村「来いよ。茶ぐらいは入れてやる」
村人は一向を促した。彼はライアンと名乗った。
Commentaires