エピソード50『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』
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- 2024年5月1日
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更新日:2024年6月30日
エピソード50
集落のはずれに、ライアンの家はあった。小さな粗末な家だ。
彼は本当に、粗末な茶だけで一行をもてなした。
あ「あったかーい♪」ななは感謝の気持ちを込めて、褒め言葉を探した。
ゆ「どうして関所の兵士さんは、旅人すら越境させてくれないの?」
ラ「知らないのか?両国の歴史を」
ベ「申し訳ない。何も知らなかった」
ラ「カルベローナとギュイオンヌは、信じる宗教がまったく異なる国だ」
ア「それぞれの信仰を、尊重すればいいんじゃないのか?」
ラ「カルベローナはわりとそういう考えをする国だがね。ギュイオンヌは違った。
国境周辺には、どちらの民族ともつかぬ者たちが暮らしていたりする。国境線を引くのは、庶民じゃなくて政治家だからな」
ア「それで?」
ラ「ギュイオンヌ側の僻地に住む者の中には、カルベローナの文化に近い者も多かった。
宗教統制が強まったとき、そいつらは自分たちの文化や宗教を守りたがった。
だが、ギュイオンヌの役人は、僻地の者たちの暮らしや信仰を厳しく統制しようとした」
ゆ「改宗せよ、と?」
ラ「そうだ。
そしてカルベローナ側に移り住みたがる者が増えたので、役人はここらに大きな壁を作った。
人口は国力を示す1つのバロメータ。ならず者だろうが数をかき集めておきたいんだろう」
な「あっちの国とこっちの国は仲が悪いから、入れてもらえないのね?」
はぁぁ。ベロニカは胸から大きく溜息をついた。
ベ「国境を越える手だては、ないのか・・・」
ラ「ないことも、ない」
4人「本当に!?」
ラ「あぁ。
このあたりに、向こうとこっちをつなぐ大きな地下トンネルがある、という噂がある」
ア「地下トンネル!?」
ラ「あぁ。半里(約2km)にも及ぶ地下トンネルがな。
昔、ギュイオンヌの厳しい統制から逃れたがった者たちが、必死の思いで掘ったらしい」
ベ「半里の地下トンネルなんて・・・!そんなの無理だろう」
ラ「でたらめにすぎない、と笑う者も多い。
だが、それはタブン本当にある。
なにしろ、オレは祖父さんから直接、脱走の話を聞かされてきたからな」
4人「・・・!!」
ラ「オレは、ギュイオンヌから逃れてきた者の子孫だ。
・・・別に自分のアイデンティティについてこだわりもないがな」
な「どっちの国の人なの?」
ラ「どっちの国でもないんだ」
な「そういう人もいるんだぁ」ななは不思議な感覚がした。
ラ「トンネルはある。多分な。
しかしトンネルの入口は、厳重に土砂か何かで塞がれている。
脱走に使われたのはもう100年も前の話だ。そして追っ手がないように封じられた。
・・・まだ課題は山積みだ。
トンネルの入口はどこにある?この集落から近いだろうが、それでも途方もない。
そして、入口をどうやってこじ開ける?ここまで穴掘りに来る炭鉱夫など居やしないだろう」
4人「・・・・・・。」
ベ「はぁ・・・」ベロニカは溜息をついた。
ア「どうにかなる、かもしれない」
ベ「なに!?」
ア「ドワーフは地下に暮らす名手だからね」
ベ「僕と君は、まったく違う世界を見ているように見える・・・!」
ベロニカは、自分とアミンの視野の広さの違いに畏怖の念を感じた。
ア「ちょっとやってみよう!」