エピソード62『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』
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- 2024年5月2日
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エピソード62
翌朝。漁港の詰め所に、依頼の報酬を受け取りに行った。
タコ爺さんは上機嫌に一行をねぎらった。
爺「して、依頼の報酬じゃがな。
こんなのはどうじゃろな?」
爺さんは自信満々に言うと、立派な《バトルアックス》を一行に差し出した。
ア「おぉ~!」見るからにアミン向けの武器であった。
爺「昨晩、話をしたじゃろ?
ドワーフのお前さん。戦うだけでなく武器を打ったり木こりをしたり、大忙しだっていうじゃないか。
ドワーフがムチを振り回して戦っとるのもなんだかヘンチクリンじゃしなぁ」
ア「おぉ~!!」アミンは立派なオノをまじまじ眺めてご満悦だ。
ア「僕向けの武器で、いいのかなぁ?」アミンは皆の顔を見た。
ゆ「いいんじゃないかしら♪」
みんなニコニコと賛同していた。誰も報酬など眼中なしに仕事をしていたのだ。
《バトルアックス》は一見すると大きなオノだが、ヤリの機能も兼ねるなかなか上等な武器だ。戦士が中級程度の頃に、必ずと言っていいほどお世話になる。
アミンは手にしたバトルアックスを、誇らしげに振り回してみせた。
爺「おーおー、小さな体で立派なもんじゃ!」
ア「ムチはどうしよう?誰か、使う?」とアミンは尋ねた。
キ「まだあなたが腰に差しておくといいんじゃない?」とキキは提案した。
大して重荷にならないのであれば、武器は複数用意しておいたほうがいい、とキキは勧めた。
爺「ついでに。ほら、持ってけ!」
爺さんは今度はキキに、《くろこしょう》の入った布袋を手渡した。
キ「まぁありがとう♡」
爺「して、お前さん方、次はどこへ向かうつもりじゃね?」
ゆ「そうだわ!
ついでに情報を頂けたら嬉しいんです。
私たち、特にあてもない旅なもんで・・・」
爺「ギュイオンヌ大聖堂に行くがよいじゃろ。
立派な神殿があるぞ!この国の首都じゃよ」
な「そこは窒息しちゃうんですぅ(汗)」
爺「ほ?」
ア「堅苦しくて、すぐ抜け出してきたんだよ」
爺「そうか。しからば・・・
妖精の噂の立つ町があるぞ」
ア「え?」
爺「妖精同士、仲が良いのか悪いのか知らんがのぅ。
ここから北に行くと、リーザスという小さな町がある。
暇潰しにはなるんじゃないか?」
ア「悪くないな」
な「また新しい妖精さん、仲間になってくれるかなー♪」
一行は新たな目的地をリーザスに定めた。
深い懐のように物言わず、寄せては返す美しい海を離れるのは少々名残り惜しい感もあったが、モンバーバラを離れた。
リーザスは北だと言う。ひょっとしたらそこも海辺の町かもしれない。
・・・よくよく考えてみれば、美しい海を堪能するのにモンバーバラに滞在し続ける必要もないのだ。馬車は海沿いをなぞるように走った。そうすればずーっと海を見ていられる。
しかしどうやら、村を離れれば海辺にも魔物は出没することに気づいた。あまり悠長にビーチを散歩しているわけにもいかず、内陸に入っていくことも考えだした。
アミンはささやかな疑問が頭をよぎった。
ア「そういえば、魔物はどうして町の中に入ってこれないんだ?」
キキが答えた。
キ「何でも、昔この世界を救った吟遊詩人が、世界中をさすらいながら町や村に結界を張った、と言われているわ。まぁそのとおりみたい。どこの町にも結界が視えるもの」
ア「へぇー!世界中?ご苦労なこったね!」
キ「吟遊詩人だもの。さすらうのが趣味でもあったんでしょうね。それにしてもご苦労だとは思うけど」
な「キキちゃんだって妖精のお城に結界張ってるんでしょう?」
キ「そうよ。それを100だか200だかの町にやってるんだから、大したもんだわ!」
ゆ「そんな魔力の高い人っているの!?」
キ「何か、無限のエネルギーに繋がっている人なのかもしれないわね。
そういう技もあると聞くわ。魔力を消耗せずに魔法を使う者・・・」
ア「上には上がいるな・・・!」
キ「そうよ。世界って広いの!
何か向上心を持って探求しようとしたら、幾らでも上がいて驚かされるわ!
私が何百年生きても探求心を失くさない理由、わかったでしょ♪」
な「ほえぇ~」ななはキキの数百年を想像してみるのだった。しかしまったく想像が追い付かない・・・。