エピソード64
―リーザスの町―
な「わぁキレイ!」
ななは一足早く飛び出していった。
リーザスの町は、薄紅色の石像や細工品があちこちでキラキラと光っている。
店「らっしゃいらっしゃい!
リーザス名物、ローズクォーツの招き猫は、ウチが一番一級品だよ!」
ゆ「ローズクォーツ。鉱石で有名な町ってこと?」
ア「なんか空気が悪いな、この町は」
ななは素直に呼び込みに吸い込まれていく。
店「やぁお嬢さん!どうかね?この美麗な招き猫!」
な「かわいいけど、招き猫は持って歩けないよぉ」
店「そうか。かわいい旅人にはこっちだな。
ほら、ローズクォーツのペンダント!イルカのかたちをしているよ!」
な「おぉ~かわいい♪
ねぇゆな、1つだ・・・」
ゆ「だーめ!
この町きな臭いから。何か買うとしても後でね」
な「だってぇ。後でまた来ますぅ」
ななはゆなを追いかけていった。
ゆ「どこでも同じようなもの売ってるわよ。
ちゃんと値段見た?だまされないように気を付けて!」
な「ほんとだぁ。あっちもこっちも売ってる」
土産物だけではなかった。
昔この町を作ったという魔法使いの像も、ローズクォーツ製のものが広場の真ん中で輝いている。
ローズクォーツで出来た立派な建物だってある。
そうして町を歩いていると、妙な輩に声を掛けられた。
靴「お嬢さん。靴磨きはいかが?1ゴールドぽっきりだ」
道端に座り込んで、赤いヒゲの小さな男が靴磨きの商売をしている。
キキの革靴は長旅ですっかり汚れていた。
キ「あら、お願いしようかしら」
キキは靴を差し出す。男はキキの顔を見上げた。
靴「うん?おまえはエルフか?」
キ「シーっ♪」
男はつまらなそうな顔をして、黙々と靴を磨いて「あばよ」と小さく言った。
キ「なによ。愛想の悪い男ねぇ」
そしてどうも、同じような土産屋が乱立するだけでなく、路上の靴磨き屋も何人かがたむろしているようであった。
一行は手頃な宿をとった。
さて、この町に来た目的は何だっけか。宿屋の店主で情報収集だ。
ア「おじさん。この町、妖精がいるんだって?」
宿「妖精?それは知らんがね。
この町は、靴が盗まれるなんて事件がちょいちょい起こるよ。気を付けな!」
ア「靴の盗難?
それって靴磨きの連中のしわざじゃないの?」
宿「いやぁ彼らは悪者じゃないよ。
どっかの町の名うての靴職人でね。靴の盗難があっても、彼らが作ったり直したりしてくれるから、この町は平和でもってるさ」
ア「うーん?」なんだか妙な気もするが。