エピソード69
北の地には大きな岩山がそびえ立っていた。これが炭坑であるらしい。
炭坑の入口では、2人の炭鉱夫が途方に暮れたように立ちすくんでいた。
ア「すみませーん!」
鉱「なんだね?君たちは。ここは危ないよ!」
な「ローズクォーツの洞窟ですか?」
鉱「そうだよお嬢ちゃん。以前まではね」ななが話しかけると、男は少し丸くなった。
ゆ「以前までって、今は?」
鉱「もう掘り尽くしちまってね。売り物のローズクォーツどころか、くすんだ色の水晶すらもう掘れっこないよ。
そればかりか、魔物まで出るようになっちまった」
ア「だったらもう、大人しく撤収すればいいじゃんか?」
鉱「それがよぉ。
水晶の下に出てきた真っ黒い石がよぉ。
なんでもレアメタルとかいう貴重な石だっていうんだよ。
ギュイオンヌのお偉いさんが、『科学を進歩させる鉱石だからぜひ掘りたまえ!』ってよ。すげぇ大金を積んでいくんだ。
でも魔物が強くて先に進めねぇ。どうしたもんかね!」
キ「魔物は、どこから出てきたの?」
鉱「しらねぇよ。内から湧いて出たんだろう」
キ「外から入っていったわけじゃないのね?」
鉱「知らねぇよ。たぶんな」
ア「どういうこと?」アミンはキキに、質問の意図を尋ねた。
キ「炭坑の内側から魔物が湧き出るってどういうことよ?
炭坑の奥底に、さらにどこかに繋がる穴でもあるわけ?」
ア「不吉な予感がする、ってことか・・・」
鉱「不吉な予感がするぜ。
なんかどうもガスみたいなもんで空気が悪い気がする」
ア「潜ってみる必要が、あるな」
な「こわいよぉ」
鉱「入るのか?おい!
危ねぇっつってんのに!」
ア「大丈夫!僕らは冒険者さ!」
鉱「子供の探検ごっこにしか見えねぇぞ!」
炭鉱夫たちの制止を振り切り、一行は炭坑に突入した。
掘り尽くしたことが幸いして、炭坑は口がとても広い。なんと、馬車のまま突入が出来そうだ。
しかしガスが湧いているという噂もあるゆえ、「日没までに戻れそうな範囲でしか探索はしない」とキキは皆に言いつけた。皆は二つ返事で同意した。
ピンク色の幻想的な洞窟が広がっているものかとナナは想像していたが、そんなことはなかった。それはもう掘り尽くされてしまったのだ。くすんだ色の水晶ばかりが残る大きな洞穴である。そしてそれも、真っ暗闇の中では色などろくにわからない。人工の炭坑だ。視界を得るためのランプはしつらえられてはあるが。
馬車はカパカパと大きく音を響かせながら、素直に一行に従って地底へ降りていくのだった。
炭坑はたびたび分かれ道になる。道案内をする鉱夫はいない。行き止まりまで進み、引き返したりしながら、だんだん奥へと降りていく。しかしいかにも自然の迷宮である!
半刻も歩くと、魔物が出くわしはじめた!
コウモリやムカデの変異ばかりではない。地中に生息する生き物以外の生き物が、送り込まれている気配がある・・・。
空気が悪く体調は万全ではない。しかも、地盤を揺らしては不味いという噂を聞いたゆえ、派手に戦うことも出来ない。一行は地味に苦しい戦いを強いられるのだった。
シュー、シュー、シュー・・・
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