エピソード7
周辺には派手に、赤い血が飛び散った。
「キー!キーキー!」
そして、狂暴なサルは倒れ込んでもがいた。致命傷と感じたのか、一目散に逃げだしていくのだった。
ななは、無事だった。
ゆ「私はこないだまで看護師!
血を見るのは・・・
怖くないんだから!!!」
な「はぁ、はぁ、はぁ・・・あ、ありがとう!!」
安堵したななの目線の先に居たのは、血まみれの小さなサバイバルナイフを手に持って、震え泣きながらも強がる、ゆなの姿だった!!
ゆなは、逃げ出したハヤトのリュックにはナイフの1つもあるだろうと読んで咄嗟に駆けだし、そのキャンプ用のナイフでなりふりかまわずサルを攻撃したのだった!
遠巻きに見ていたハヤトは、ゆっくりと戻ってきた。そして声をかけた。
ハ「よくやったな!遥かなる冒険の幕開けに相応しい、いかにもロマンに満ちた出来事だ!」
ゆ「アンタは逃げただけじゃないのよ!!」
ハ「だって怖いんだもんよぉ!
言っただろぉ?動物だって魔物と大差ないんだよ!」
ゆ「偉そうに言うことじゃないでしょ!」
ゆなはナイフの血をふき取って、ハヤトに返した。
ハ「それにしたってあのサル、動物だったのか?」
ゆ「なによ、自分で言ったばっかじゃない。動物も魔物と大差ないって」
ハ「だけどよぉ、動物にしちゃぁ目つきがイカれてなかったか?」
な「普通のサルがどんな顔でケンカするか、知ってるの?」
ハ「シラン」
ゆ「もう!無責任ねぇ」
ハ「それにしても・・・
なんでサルはななばっかり襲ったんだ?」
な「なんでだろう?わたし、かわいいから?」
ゆ「もしや・・・!」
ゆなはななの背中のリュックに顔を突っ込み、くんくんと匂いをかいだ。
ガサゴソガサゴソ・・・
ゆ「やっぱり!
あんたなんでバナナなんか持ってんのよ!」
な「だってえ。遠足と言ったらおやつはバナナだと思ってぇ」
お腹もすいたしサルも怖いし、一行はここでバナナを食べてしまうことにした。
3人は青ざめた!
「方角がまったくわからない・・・!!」
サルとガチャガチャ騒いでいるうちに、どっちから来てどこに向かおうとしていたのか、さっぱりわからなくなってしまった・・・。
山で遭難することなんてそうそうないだろう、と特にゆなは思っていた。常識的に振る舞っていれば、遭難することはない。しかし大自然の中とは、思いがけないことがあるのだ。・・・と痛感したときにはもう遅かった。
街からわずか電車で2時間の場所にも、台本のない冒険は潜んでいるのだ。
な「どうしよう・・・」
もう冒険とか逃避とか言っている場合ではなかった。安全な場所に帰りたい。
3人の意思は一致しているが、しかし、どの方角に向かえば安全なのかわからない・・・。
しかしハヤトは少々強がり、棒切れを振って草をなぎ倒しながら、先陣を切って歩いた。
ハ「まぁどうにかなるって。すべての道はどっかに通ずるんだよ!」
ゆ「道すらない場合は(汗)」
しかしハヤトの歩く方角に反論する理屈も、2人は持ち併せてはいなかった。
※ハヤトにイラっときてもちょっとガマンして読み進めてみてください(笑)
私の創作物が好きな人は、ハヤトのキャラクターがキライだろうと思います。しかしちょっとガマンして読み進めてみてください!そのうちうっぷんは晴れますので(笑)